7人の夢の詰まった理想のボデガ
クロス・デ・ロス・シエテはメンドーサの町から約80キロほど南下したバリエ・デル・ウコ(ウコ渓谷)のビスタ・フローレスにある。西側にはアンデス山脈が間近に連なり、雪をかぶり丸みを帯びた富士山のような標高6800メートルのトゥプンガト山が見える。この地域にはこれまで葡萄畑がほとんどなかったが、ロランが言うように、冷涼であり、また昼夜の寒暖差が大きいこと、斜面にあり、アンデス山脈から流出した大きめの石が交じる水はけのよい良質な土壌、かんがいのためのアンデスの雪解け水が豊富に地下を流れているなど、高品質ワインができる産地として急速に注目され、海外からの投資だけではなく、地元のボデガも葡萄畑の開発に乗り出している地域だ。
ビスタ・フローレスの町の西側、標高960メートルの地点にある濃いサンゴ色をしたメキシコ風コンテンポラリーなゲートをくぐるとそこがクロス・デ・ロス・シエテの敷地になる。その先、山すその標高1135メートルまで広大な葡萄畑が続いている。土地全体850ヘクタールのうち、現在までに350ヘクタールの植樹が行われたが、まだ未開発の土地が半分以上残されていることになる。ロランの指示により、樹間1メートルに畝幅1.8メートル、1ヘクタール当たり5500本というこの国ではかつてなかったような密植。 1999年の植樹だから、樹はまだとても若い。アルゼンチンではこれまで畑を水浸しにするかんがい方式がとられていたこともあり、フィロキセラ禍のリスクは低かった。が、より良質な葡萄栽培のためにすべてドリップ式のかんがいを導入しているこの畑では、フィロキセラのリスクを考えて全体の80パーセントはアメリカ産台木に接木されている。
クロス・デ・ロス・シエテの計画にミッシェル・ロランとアルコートとともに参加したパートナーたちは、カトリーヌ・ペレ・ヴェルジェ(クリスタル・ダルク経営者の一族 シャトー ル・ゲのオーナー)、ローラン・ダッソー(航空機・兵器産業の経営者一族、サンテミリオンにシャトー・ダッソーを所有)、ベンジャマン・ロッチルド(ロッチルド帝国の後継者、メドックにシャトー・クラークを所有)、ベルトラン・クヴリエ(ワイン商、メドックのシャトー・レオヴィル・ポワフェレの共同経営者)、ドウラン家(ネゴシアンのガム・オーディ共同経営者、サンテミリオンにシャトー・サンソネを所有。アルタ・ビスタの現経営者)。土地は彼らひとり当たり120〜130ヘクタールずつに分割所有されており、区画名にはフローレス(花)という名前を付けたものが多い。全体の50パーセントにマルベックが、残りは各区分所有者の考えによってメルロ、カベルネ・ソーヅィニヨン、シラー、プティ・ヴェルドなどが植えられた。
この全く新しい畑になぜマルベックを主体にして植え付けを行ったかについてロランは「私は常にその地元で成果を発揮している品種を重用することにしている。アルゼンチンではマルベックがうまく育っている。その国でポジティブな品種であり、そしてアルゼンチンがこの品種によって知られているならば、われわれも使ってもよいではないかと思ったからだ」と言う。
ヴィンテージ2002がクロス・デ・ロス・シエテにとって初めての収穫となった。現在、醸道場はペレ・ヴェルジェのボデガ・モンテビエホ。醸道場には最新鋭の機器が設置され、それぞれの品種はアサンブラージュまで別々に醸造されるという。どうしてマルベック単体のワインではなく、ブレンドなのかと尋ねたら「私自身は顧客の要望がない限りはヴァラエタルワインを遣らない。つまりヴァラエタルワイン信奉者ではないからだ」とミッシェル・ロランは言う。
ヴィノテーク2002年11月号より抜粋