ハスカップについて

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ハスカップ(くろみのうぐいすかぐら)は、北海道苫小牧市に広がる勇払原野に自生しているすいかずら科の仲間。毎年、夏になると、黒紫のかわいらしい実をつけます。
アイヌ語のハシカプ(枝の上にたくさんなるもの)が名前の由来ですが、地元では「ゆのみ」という呼び名もあり、今でもご年配の方々にはこの「ゆのみ」の愛称で親しまれています。
ゆのみ(ハスカップ)は、古来から不老長寿の妙薬として知られ、近年、機能性食品として注目を浴びている北海道の特産品です。

被子植物門 雙子植物網 合弁花亜網 あかね目 すいかずら科
和名/くろみのうぐいすかぐら、けよのみ
ハスカップは勇払原野の、それも苫小牧市の東半分だけに主に自生している亜寒山帯の潅木。
原産はシベリアですが、渡り鳥達がこの地にハスカップの種を運んできたのです。
苫小牧勇払原野には、ウトナイ湖というラムサール条約にも登録された野鳥の中継地があり、渡りの季節にはマガンや白鳥など数万羽が飛来します。
夏、海からの霧がかかり、気温もさほど上がらない、冬は雪が少ない為冷え込みが厳しい、この土地独特の気候が、はるか北方から運び込まれた植物の群生に、たまたま適していたのでしょう。
勇払原野以外にも自生している所はあるものの、大群落は他にはないそうです。

苫小牧市東部に広がる
勇払原野。
江戸時代末期に北海道開拓の拠点となった土地です。


【写真 左】勇払原野北部に位置するウトナイ湖。奥に見える白い建物は原野開拓によって現れた石油コンビナート基地です。
【写真 右】今までに確認された野鳥は260種以上。日本でも屈指の渡り鳥の中継地です。



昭和28年、三代目当主(初代社長) 小林正俊は、ふるさと苫小牧を象徴する銘菓として、心の原風景「勇払原野」に実るハスカップを使ったお菓子「よいとまけ」を作り上げ、発売致しました。
(当時1本50円)
しかし発売に至るまでには大変な知恵と苦労を伴いました。
ハスカップはなにしろ酸味が強く、薄くて破れ易い皮の中身は殆どが水分という厄介な代物です。
まず、水飴にすることに成功し、次いで羊かん、そして様々な試行錯誤の末、ジャムに仕上げ、1本の長いロールカステラの外側にそのハスカップジャムを塗りこみました。
昔は甘いものと決まっていたお菓子の味に、酸味という新たな味覚を加えたことは新鮮さをもって受け入れられ、よいとまけはもちろんのこと、その後次々と開発されたハスカップ菓子はいずれもロングセラーとなっていったのです。(ただし地元以外では殆ど知る人のいないハスカップを紹介する為に、宣伝に莫大な費用と労力を伴いました。)
当時ハスカップは人の手によって栽培されることなどなく、人々の口に入るものは全て自生のハスカップでした。
ハスカップのお菓子を作るために私達は、自ら森に入って摘み取ったり、市民の方々が摘んだものを買い取ったりして原料の調達をしていましたが、一般のご家庭で楽しまれる分を含めても、有り余るほどゆのみ(ハスカップ)は採れたのです。

▲ 小林 正俊


▲ よいとまけ




ところが勇払原野は、昭和37年頃から猛烈なスピードで姿を変えていきました。
苫小牧工業港が港らしい形を現してから、臨海工業地の整地が行われだし、日軽金66万坪、隣接の工業敷地100万坪、広路3号線が沼ノ端へ直線で伸び、ゆのみ(ハスカップ)の群生地はほとんどがコンクリートの下敷きになってしまいました。
曲がりなりにも8〜10トンの収穫のあったゆのみ(ハスカップ)は、遂に何キロという単位の集荷しか得ることの出来ない年がやってまいりました。皮肉なことに、その頃やっと宣伝の効果が表れはじめ、菓子類の売上は上昇の一途をたどりはじめました。するとこれまで無関心だった地元の人達までがゆのみ(ハスカップ)に目を付けはじめ、そうでなくても群生地が半減したハスカップは摘みに行っても、台所の床下で「ハスカップ酒」になったり「ジュース」になったりしてストックされ、私達のところまで回して下さる余地はなくなって、原料係は真っ青になりました。私達は世界中からゆのみ(ハスカップ)又はそれに代わるものを探し、集めました。サハリンの「フレップ」、タスマニアから、ブルガリアから、これではないかというものが集められました。
▲ 築港前の前浜

▲ 苫小牧港築港状況
(昭和40年度)

しかし、どれもゆのみ(ハスカップ)ではありませんでした。勇払原野のハスカップは、昭和49年にはほぼその姿を消し、私達はやむにやまれずゆのみ(ハスカップ)の栽培を始めました。

【写真 左】ほぼ現在の姿の苫小牧西港。さらに写真右上方向には、苫小牧東港、上方向には苫小牧東部工業団地が建設されました。
【写真 右】掘り込み土砂による土地造成

苫小牧東部工業団地内の柏原展望台にて撮影。正面は樽前山。手前に点在する建物が進出した企業の工場。もっともハスカップが群生していたのも、この辺りです。



昭和50年頃、北海道美唄市茶志内町の道立農業試験場 の協力を受け、北海道穂別町森林組合の山林を使い、勇払原野のハスカップの良い実だけを選んで得た種から苗木作りにかかります。翌年美唄市の農家2軒とハスカップの栽培契約を結び、元気に育った苗木5万本と肥料を、無償で提供しました。それから収穫まで5年はかかります。

昭和57年、美唄市農協の内部で「ハスカップ生産組合」が設立され、個人契約から組合との契約となり、現在の安定供給への道筋が生まれました。地元の苫小牧では無く、わざわざ遠い美唄市に栽培を委託することになったのは、当然理由があります。
私達にとっても自生地である勇払原野近郊の苫小牧市内で復活させることが理想でしたが、当時の苫小牧は広大な工業基地建設を進めており、農家は土地を売って離農する動きがあり、交渉は不調に終わりました。その一方美唄では、政府の減田政策により他の作物へ転作する農家が増え、ハスカップを受け入れる条件が苫小牧より整っていたと言えます。
また、栽培方法が確立していないだけに、ハスカップの研究者が所属する美唄市の道立試験場の指導が不可欠で、それには同市内での栽培が自然の流れだったのです。

それからというもの、美唄市農協の熱心な取り組みのおかげで品種は改良され、バイオテクノロジーによって自生種よりはるかに大粒で、酸味や苦味が少なく甘味の強い、高品質なハスカップが生産されるようになりました。作付面積も順調に伸び、現在美唄市農協では年間40〜50トンの収穫があります。


▲ 美唄の市の雄大な景色

美唄で品質・生産量ともに群を抜く生産者、三浦さん。背丈以上に育った立派なハスカップの木は、たゆまぬ努力の証です。



美唄の各農家で収穫されたハスカップは、すぐさま農協の集荷場に集められ急速冷凍します。現地の皆さんが一粒一粒丁寧に摘み取り、細心の注意を払って枝や葉、ゴミなどを完全に取り除いてくれるので、洗わずにそのまま口にすることができます。もちろん残留農薬もございません。
ハスカップは実がデリケートなため直接水で洗うことができないので、収穫の際に手間を惜しまないことがとても大切なのです。
大粒で味も良く、安心安全な高品質のハスカップは大型の冷凍庫で鮮度を保たれたまま保存されます。
私共にとってなくてはならない存在のゆのみ(ハスカップ)。
一時は危機的な状況に陥ったものの、新天地で生まれ変わり、見事に復活を遂げました。



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