(2)使い方の注意・メンテナンス
A)オイル、クリームを使うとき
ヌメ革はもともと革が自然に持っている脂分を残しておりますので、他の革ほどにはオイルなどで脂分を補給する必要はありません。逆に不用意にオイルなどを与えてしまいますと、変色やしみなどの原因になることがありますので、ご注意下さい。
但し、元々含んでいた脂分が完全に切れてしまいますと、乾燥のため革表面にひび割れなどが出てきてしまいますので、そのような場合にこそ、脂分を補充する必要が出てきます。
脂分を補充する時には市販のオイルやクリームで良いのですが、ヌメ革専用のものか、ミンクオイルなどの天然成分系を使用する方がいいでしょう。
但し、オイルの成分によってももちろんのこと、ヌメ革自体の質や加工の度合い、革の部位によってはシミになったり固くなってしまったりと全く効果が異なることがありますので、全体に使用する前に一度端などの目立たない個所で試してから使う方が無難です。
なお、オイルやワックスはごく少量を手の指もしくは柔らかい布にとり、全体にごく薄く均等に延ばすようにすり込んでください。多量のオイルを使用すると、変な色のシミになったりムラができたりしますので、くれぐれもご注意ください。
B)防水スプレー
ヌメ革の最大の弱点は何といっても水分が付着し、シミになってしまうことです。もちろん、後に述べるように水シミは除去することが可能なのですが、できれば事前に予防しておきたいものです。
そこで防水スプレーの出番となりますが、防水スプレーの種類によっては防水スプレー自体が染み込んでシミになってしまったり、また溶剤の匂いが革に付いてしまうこともありますので、オイルなどと同じく端の目立たないところで試すなど、事前に注意が必要です。
また、防水スプレーをしていても水分が付着したまま放って置くと徐々に染み込んで結局シミになってしまったりするので、やはり水がかかってしまった場合は、できるだけ早く拭き取るなどの手間は必要となります。
なお、内部から脂分が出てきていたり適切に脂分を補充したりなどして、表面に脂分の薄膜が形成されているような場合では、ある程度の撥水効果が認められる場合もあります。
C)保管方法
水シミの次に多い革の失敗談といえば、やはり夏場にカビを生やしてしまったということではないでしょうか。思い出したように鞄を押入れから出してみたらベルベットのようにカビだらけになっていたなんてことは、革好きの方なら1度や2度は経験されているとおもいます。
タンニン鞣しであるヌメ革は、比較的カビが生えやすいといわれていますが、普通に使われている場合には、まずカビは生えません。
他の革の場合も同様ですが、革にカビが生えるの以下の条件がいくつか満たされた場合に限られます。
※カビの生えやすい保管条件
(1) 通気の悪い密閉空間に使用せずに放置
(2) 湿度の高い環境
(3) 汚れの付着など、カビの栄養源になるものがある
逆に言えば、これらの逆の条件下に保管すれば、まずカビは生えないと思われます。つまり、
※カビの生えない保管方法1
(1) 風通しの良い開放された空間
(2) 除湿機や乾燥剤などを置き、湿気を除去
(3) こまめに鞄を乾拭きする等して汚れを除去
などが好ましい保管の仕方といえると思います。但し、(2)の乾燥剤は革に直接触れるように使用すると革が乾燥しすぎてボロボロになったり、変質したりすることがありますので、気を付けましょう。
また(3)のようにこまめに乾拭きをすることは汚れの除去のほかにも、適度な刺激を革に与え、つやなどの味わいを促進する効果もあるので、日常のお手入れとして習慣にしておきたいものです。
以上にさらに加えるならば、
※カビの生えない保管方法2
(4) 直射日光は避ける(陰干しになる位の方が良い)
(5) 型崩れを避けるために、中に新聞紙を適度に詰める
(6) 表面が乾いてしまったら、オイルを補充する
が挙げられるかもしれません。(5)の新聞紙には鞄内部の湿気を吸収する効果もありますが、鞄の中が白などの場合、新聞紙のインクが移る可能性があるので、新聞紙の周りをティッシュで包んで入れるといいでしょう。
なお最後に、一番のカビ予防はこまめに使ってあげることとまとめておきます。
D)水シミができてしまったら
ヌメ革に水分が付着してしまうと、そこに水分が染み込んでシミになってしまうときがあるのは、良くご存知かと思います。こうしてできた水シミは早いうちならば、以下の手順でほとんど目立たないようにすることができるので、あまり神経質にならないようにしましょう。
※水シミを目立たなくする方法
(1) ぬるま湯を用意する
(2) 柔らかいきれいな布を用意し、(1)のぬるま湯にたっぷり浸す
(3) (2)の布を軽く絞っておく
(4) (3)の布で水しみのある部分を含む広い範囲、もしくは鞄全体を、
均等にむらなく湿らせる
(5) 鞄の中に新聞紙などを詰め、型崩れを防ぐ
(6) 直射日光に当てず、日陰干しで時間を掛けてゆっくりと水分を抜く
(7) 必要に応じてオイルなどを塗り、乾拭きして風通しの良いところにしまう
注意としては、あまり熱いお湯は使わないこと、水しみの場所だけでなくそれを含む広い範囲を湿らせること、ドライヤーや暖房器具などで急速に乾かそうとしないこと、などが挙げられるでしょう。但し、以上の方法は油などが付いた場合には有効ではないので、ご注意ください。
E)傷や汚れの取り方
ヌメ革は生の状態に最も忠実な革なので、クローム鞣し革に較べかなり容易に傷が付いてしまいます。ですが、一度付いてしまった傷はどのようにしても取ることができません。ただ、薄いかすり傷ならば革の風合いが増すにつれて自然と埋もれて目立たなくなりますし、深い傷は、付き方によってはむしろ革らしいいい味わいを演出する名脇役になってくれるので(マニアの中にはジーンズのようにわざと傷を入れる人もいます)、あまり傷に神経質になる必要はないと思います。ヌメ革はクローム鞣し革に較べ傷が「様になる」ので、むしろある程度の傷は楽しむくらいの余裕を持ちたいものです。
次に汚れですが、革の繊維の中まで染み込んでしまった汚れはまず落とせないと思って下さい。中まで染み込んだ汚れを無理に落とそうとすると、周囲の革が脱色したり荒れてしまったりなどの悪影響が出るからです。
では落とせる汚れはというと、中まで染み込んでいない、表面のみについている汚れです。これならば、たいていは柔らかい布で乾拭きすれば目立たなくなってしまいます。
拭いたくらいでは落ちない汚れは、ぬるま湯に浸した布で汚れ部分をかるくなでるように拭いてみてください。表面的な汚れは油性のものでなければ、たいていこれで取れると思います。ただし、ヌメ革を湿らせた後は、水シミを取り除く要領でシミと水分を抜いてください。
なお、カビについては一度付いてしまったものを完全に除去することはかなり困難です。特に色素を出すカビはカビ自体を退治しても色素は残ることが多いため、実際上除去が不可能といえます。カビに関しましてはやはり予防が最も有効といえると思います。