拭漆職人

拭漆職人

もともと山中漆器の開発販売メーカーに勤務していた森本さんは、仕事を通して"拭漆"の魅力に開眼。4年前に一念発起してメーカーを退職後、拭き漆師に師事し職人となりました。長年、販売者としてお客さまと身近に接してきたため、買う側、作り手の両者の気持ちがわかるという異色の職人さんでもあります。
今回のインタビューでは、拭漆という仕事、漆器の買い方、扱い方、修理について、ざっくばらんに語っていただきました。

拭漆の仕事の魅力はどんなところですか?
拭漆というのは、読んで字のごとく、漆を塗って拭くことの繰り返し。ろくろで挽いた木地の上にする作業です。一見単純なようやけど、この作業の繰り返しで一気に仕上げまでいってしまう。漆器の出来を左右する非常に大切な仕事です。実は私も「入りやすい仕事かな」と簡単な気持ちで始めたんですが、実際は大変神経を使う奥深い仕事やったね。しかし、工夫次第でいろいろな雰囲気が出せる面白みも、この頃だんだんとわかってきたところです。
拭漆の仕事で時代とともに変わってきた点はありますか?
少し前までは「とにかく作って売る」というような乱造の傾向があって、目に見えないところで手を抜いているようなところがあったかもしれんね。なにせ、拭漆という仕事は、木地に2回漆を塗った後で表面を磨き、さらに漆を塗り拭くという工程を最低4回から20回まで繰り返すんやから、完成度をひたすら目指していたのでは、途方もない値段になってしまう。そこで最近では「観賞用の品物」と「使う品物」との住み分けができてきたと思う。輝くような光沢がある芸術品と、ザラつきはあっても味があって普段遣いしやすい品物というようなね。
最近では、買いやすい価格の商品やから手を抜くというような感覚でなく、その値段でどれだけ上のレベルの仕事ができるかという気持ちで取り組んでる職人が多くなってきてる。やっぱり「いい品物を作らなければ」という気持ちがないと、職人はダメになっていくし、業界も廃れていってしまうと思う。お客さんも、漆器を「見て満足する特別な器」「毎日使う日常の器」を上手に分けて買えるようになると、より漆器遣いが楽しくなってくるんじゃないでしょうか。
作り手から漆器を使う場合のアドバイスを
作り手としてはやはり丁寧に使ってほしいね。といってもほんの少し気を使う程度でいいんです。あまり熱い湯を使わない、水の中に長く漬けておかない、ぬれたままで長い間置かないでなるべくすぐ拭くようにする。とまあこのぐらいのものですよ。私も自分の汁椀には、そんな扱いで十分やもの。でも、そのちょっとした心遣いで、器が長持ちし、いい風合いになってくるんやわ。それに丁寧に器を扱うことが、毎日の暮らしを大切にするという気持ちにつながってくるしね。
最近、多くなってきている修理の依頼について、どう思いますか?
お客さんが「修理したい」と言う場合は、できる限り修理するのが、私たちの役目と思ってます。「そんなもの修理する値打ちないわ」とつっぱねてしまうのは簡単やけど、お客さんの漆器への思い入れを無視して失望させてしまうのは、とても残念なことです。その品物に愛着があって「直してでも使いたい」と言うのは、作り手としては嬉しいことですよ。まあ、中には「これは直すより、買ったほうが」と思うものも多いのも事実なので、メーカー側はとにかく一度見てみましょうという姿勢で望むことが大切やと思います。

買い手を失望させない「よいもの作り」を日々模索している森本さん。修理への対応も一貫しており、使い手の気持ちを常に大切にしている姿勢に、卯之松堂も大いに共感しています。こうして誠実に器作りに励む職人さんたちは、卯之松堂にいつも新鮮な活力を与えてくれる大切な存在です。これからも両者の切磋琢磨でよりより漆器を創っていくこと、それが卯之松堂の願いです。

■■■
漆器に愛着を持ち、直してでも使い続けたい。そんなお客さまの声にお応えして、卯之松堂でお買い上げになった漆器に限り、修理を行っております。ご要望の場合は、まずメールまたはお電話でお知らせ下さい。

 


 
●interview hata
text 塩田ヨーコ