木地職人

木地職人

先祖代々、木地挽きにたずさわる村井さん。この仕事についてからすでに24年。木とふれ合い、木を形にしていく日々の中で、美しく使い勝手のよい器を模索し続けてきた人です。「適正価格で良質の製品を作るためには、機械の導入はむしろ必要」と研究を重ね、今や山中漆器の中でも最先端の技術力を持つことで知られています。
今回のインタビューでは、全国でも珍しい山中漆器独特の「縦木取り」工法を中心に語っていただきました。

山中漆器の大きな特徴となっている「縦木取り」には、どんなよさがあるのですか?
「縦木取り」とは、木目と垂直に切った輪切りの木材を加工していく方法。全国でも山中漆器でしか見られない珍しいものです。適しているのは、棗、お盆、お椀、茶筒、茶托のような丸い形の器。ただし、直径が大きなものは、材料が少なく高価になります。
縦木取りの一番のよさは、やはり動きにくい(変形しにくい)こと。作っている間や、できあがったものにほとんど変形がないから、安心して扱える。これは山中の職人の自慢ですね。だから棗・吸物椀・茶筒みたいな、合い口(ふた)のある器によく使われます。ふたがぴったりと合わない器なんて、みっともないですしね。それと、縁が割れにくいので薄く挽ける。薄挽きの繊細な器が多いのも山中の特徴です。
木地挽きの難しさはどんな点ですか?その魅力とは?
木地挽きには、大きく分けて荒挽き・荒ぐり・仕上げ挽きの3工程があって、うちでは、器のおおよその寸法に荒挽きされてきた木を、荒ぐりし、仕上げ挽きしています。
その工程は、
(1) 荒挽きした木を約2〜3週間かけて乾燥し1週間掛けて戻す
(2)完成まで後2〜3ミリという程度に荒ぐり
(3)完全な形に成形し、仕上げ挽きする
というものです。
木を挽くという作業は、漆器作りの最初の工程であり、その仕上げが悪いと後々まで響くので大変神経を使います。特に山中漆器では、拭漆といって、木目が透けるような漆仕上げをするので、木地が悪いと使い物にならないんです。木地が見えなくなる漆器とは違って、ごまかしやいい加減さは許されない。でこぼことした凹凸は言うまでもなく、表面にカンナ跡をどれだけ残さないか、また芸術性の高い製品なら、木目がどのように出るかを見極めて挽くセンスも問われます。最初の仕事でありながら、後にはっきりと残るという点が難しさでもあり、やりがいでもありますね。
独自に工夫していることはありますか?
山中漆器というと、手挽きロクロと思われがちですが、うちでは主に旋盤を使った木地挽きを行っています。山中で大量生産が行われ始めた頃に、父が業界で始めて旋盤(※)を使い始めたんです。芸術品を作る作家さんとは違い、高品質で同じものを数百個挽かなければならない木地師には必要なものです。特に、最近作られるようになった湯のみやマグカップのような深い内側を挽くために便利な機械です。現在でも、茶托や皿などの浅いものしか挽かない職人さんならば必要ないかもしれませんが、いろいろな形状を挽く場合には欠かせないものになってきています。
縦木取りの場合、旋盤に木地を取り付けて回し、備え付けのカンナで削っていくのですが、そのカンナを工夫することによって、手仕事に匹敵するほどの完成度の高い仕上げができます。切れ味のよいカンナを作り、それをどのように当てて挽いていくか、日々思考錯誤しています。時には、うちのカンナを見に来る他の職人さんもいますよ(笑)
これからどんな漆器を作っていきたいですか?
職人である以上、いろんな形作りに挑戦していきたいという欲があります。山中では今までロクロ仕上げの丸ものしか生産されていませんでしたが、近年、NCルター(※)という機械を導入し、コーヒートレーなどの角ものも作れるようになりました。これからは、角盆に円状の模様を描くような、角と丸と融合した独自の商品づくりもしていきたいと思っています。

村井さんのような優れた職人さんは、デザインと使い勝手とのバランスを常に考えて仕事をされ、発注者が気づかない点をフォローしてくれる頼もしい存在です。「基本はきれいな形づくり、それがわかる人に買ってもらいたい」という彼らの器を、卯之松堂は伝え続け、そのよさを知っていただきたいのです。

※旋盤
もともと、金属加工用に使われていた工具を木工加工用に改造した機械  
※NCルーター
板の木地をコンピューターに入力された図面を元に加工する機械。これには、横木を使います。

 


 
●interview 畑 学
text 塩田ヨーコ