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スペシャル・インタビュー企画 視界良好、乱れなし/田中隼磨
凛とした空気を漂わせる若者だ。そのまなざしは強い光をたたえ、年齢と風ぼうに似つかわしくない威厳がある。
決断は正解だった。トリコロールからグリーンへ、活躍の場を求めた田中はヴェルディ躍進の原動力となる。同時に、U‐21代表では、貴重なアウトサイドの担い手として自身の価値を高めた。
シーズン途中でありながら、彼のような選手を補強できたことは望外の幸運だった。
願わくば、これからもヴェルディとの蜜月が続くことを――。
Q ――あなたの存在によって、私たちはより多くの楽しみを得ることができました。
きっと、サポーターも感謝の気持ちでいっぱいだと思います。
田中 サポーターの皆さんはいつも熱い応援をしてくれます。ピッチで声援が聞こえるとうれしいし、自分の力になる。こちらこそ感謝したいですね。
Q ――以前はあまり見られなかったことなんですが、このところクラブハウス周辺に制服姿の女子校生の姿があります。あなたの引力だろうと、もっぱらの噂です。
田中 関係ないっすよ(笑)。
Q ――ファンレターをもらうことも多いでしょう。あんまり人気があるものだから、うら若き新妻は妬きませんか?
田中 それはないです。ファンはファンですから。いただいた手紙はすべて目を通していますし、返信用の封筒と色紙が入っていれば、サインをして送り返しています。
スタジアムや練習場に熱心に通ってくれる人たちのためにも、ピッチでいいプレーを見せたい。
Q ――同年齢の選手と比べて、ふだんの受け答えがずいぶんしっかりしています。若くして所帯を持った影響でしょうか。
田中 多少はあるかもしれませんね。家に帰ったら、子どもとカミさんが待っているわけで、ひとりとは全然違う。やらなければいけないという自覚が出てくるし、自分の一番の力になっています。
Q ――素朴な疑問ですが、隼磨(はゆま)とは珍しい名前ですね。それと、今年の8月の誕生した海鈴(かいり)くん、響きがステキです。
田中 隼磨は「隼のように自分をたくましく磨くように」という意味だそうです。昔からちゃんと読んでもらえたことがなく、そういう面での苦労はありました。
 海鈴は夏に生まれたので、海という字を使いたかった。あと、本やインターネットで調べた結果、運勢がいいみたいなんです。とにかく、かわいいですね。休みの日は、家族3人でよく買い物に出かけます。
田中選手
Q ――さて、そろそろ本題へ。今季、ヴェルディとの巡り合わせは、ロリ監督の慧眼と出場機会を求める田中さんの希望が合致したことでした。
田中 そうですね。今思えば、使われなかった頃の過ごし方は本当に大事だったと感じます。小学生からサッカーを始めて、初めてベンチにも入れない状況になった。外から自分を見つめ直して、何が足りないのか、悔しさを抱えて練習するしかない。腐るような気持ちは、まったく沸いてきませんでしたね。自分の実力が足りないんだ、と努力するだけ。そういう時期があったからこそ、今の自分があるんだと思います。
Q ――あなたがチームに加わったファーストステージ中盤から、徐々にチームは上向いていったわけですが、当時の変化をどのように感じていましたか?
田中 ワールドカップ中断後の鹿島戦から出場して、いきなり2連敗したときはチームの雰囲気が悪かったですね。勝てないときでも空気を変えていかなければ、と思っていたのですが、なかなかうまくいかなかった。その後、2連勝して、また2連敗したんですけど、このときは負けていても以前とは違う雰囲気を感じていました。勝ったことで敗戦の意識が変わってきた感じです。みんな「まだまだ次だ!」という気持ちが強かった。
Q ――ヴェルディでは右サイドに定着していますが、マリノスの頃はボランチがメインでした。
田中 ヴェルディに来て、新しいポジションが見つかったことは大きな収穫でしたね。プロでやっていく以上、2、3のポジションはトップレベルのプレーができなければいけないでしょう。
Q ――終盤まで落ちない運動量には恐れ入ります。
田中 豊富な運動量は自分の持ち味ですから。ただ、ずっと走っていたら続かないので、要は上げ下げのタイミングです。チャンスになると思ったら上がるし、その逆は抑える。もっと臨機応変に対応できるように判断力を磨きたい。
Q ――マッチアップする対面の相手で、嫌だなと感じる選手はいますか?
田中 僕の場合、特に相手のことを気にしたりはしないですね。自分のプレーができればいい、という考えです。
Q ――10月、韓国・釜山で行われたアジア大会、準決勝タイ戦でのアシストはすばらしかった。あのグラウンダーのクロスを入れるのは、どこで判断しましたか?
田中 達也(田中、浦和レッズ)からボールを受けた時点ですね。あのとき、キーパーとディフェンスラインの間が空いているのが見えて、ちょうど悟志さん(中山、ガンバ大阪)がプルアウェイ(マーカーの視界から消える動き)して走ってくれた。悟志さんの動きがよかっただけで、僕は大した仕事をしていない。アジア大会でのアシストは、あれひとつだけだったんですよね。チャンスはあったはずだから、もっとアシストしたかったです。
Q ――谷間の世代と言われていた。
田中 U‐17の世界選手権に出られなかったという、これまでの結果が結果だから仕方ないでしょう。今回、見返すことができてよかった。
Q ――今回、アジアの国々、それもほとんどU−23のチームと戦った結果、何を持ち帰ってきましたか?
田中 田中選手 2年前、U‐19のアジアユースのときは、身体能力の差をまざまざと思い知らされたんです。自分たちと比べて、格段に身体ができていた。今回もそれはあったんですが、彼らと互角以上に渡り合えたことは経験になったし、自信につながった。
 相手の背が高くてヘディングで勝てないなら、サイドから攻めてうまく崩していったり、引いて守ってくるチームに対しての戦い方など、勉強になることは多かったですね。あと、相手のプレスが速いので、より瞬間的な判断が必要だという課題も残りました。
Q ――特に手強いと感じた相手は?
田中 全体的なレベルの高さでは、中国でしょうか。僕たちは8月に上海で対戦して負けているので、その借りもありました。決勝のイラン戦、負けたことは現実としてとらえないといけないけど、決定的なチャンスはうちの方が多かった。そういう意味では、決定力不足を感じました。
Q ――最後に、去就の話をしないわけにはいきません。とりわけ2004年のアテネオリンピックにおいて、来季どのチームでプレーするかは大きな問題です。
田中 ヴェルディに移籍したことも大きな決断でした。サッカー人生の通過点として慎重に判断したい。今はシーズン中ですから、リーグ戦のことしか考えていません。
Q ――では、事実の確認をさせてください。新聞報道などにあった、保有権を持つ横浜F・マリノスが来季は復帰させたいという件について。あなたにその意向は伝わっていますか?
田中 マリノスからそういった意志があることは聞いています。ただ、新聞報道に関して、僕はまったく関知していません。なんの意思表示もしていない。
Q ――セカンドステージのホームゲームだったと思います。試合後、サポーターへの挨拶で胸のワッペンにキスをしていた。
田中 それ、よく言われるんですよ。ファンレターに「うれしかったです」って書かれていたり。でも、実はあまり覚えていないんです。
Q ――残念! てっきりハートは緑色に染まっているかと。今回に限らず、これからも移籍について考える機会はあるでしょう。あなたがチームを選ぶ基準について聞きたい。例えば、ギャランティー、あるいは不可欠な戦力としてポジションを約束してくれること、単純にそのチームが好きだということもあるかもしれない。何が決め手になるのですか?
田中 一番は試合に出ることです。どのチームでも100%ポジションが約束されるわけではないでしょうけど、最も試合に出られる可能性の高いチームにいたいと考えています。
 将来的には海外でプレーすることが目標。そのためにはA代表に入らなければ、オファーがこないでしょう。そこまで到達して、手の届く範囲に引き寄せたいですね。
【プロフィール】
田中隼磨(たなかはゆま)/1982年7月31日、長野県生まれ。174センチ64キロ。ポジションDF。リーグ通算出場記録32試合2得点(2002年11月11日現在)。

<取材・構成/海江田哲朗>

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