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デザートワインの誘惑
デザートにもなる甘口の白ワインで最も有名なのは、ソーテルヌのワインと、ドイツのトロッケンベーレン・アウスレーゼ、ハンガリーのトカイ・アスー・エッセンシアです。これらは世界を代表する「貴腐ワイン」として必ず挙げられるプレミアムワインです。貴腐とは、ボトリティス・シネレアという名の菌が葡萄に付着し、ぶどうの果皮の表面を覆う蝋質を溶かすことによって果汁の水分を蒸発させ、糖分が凝縮されることです。貴腐菌によって糖度の増した葡萄は白ワインとほぼ同じ工程を経てワインとなりますが、大きく違う点は、葡萄はいっせいに貴腐化しないので、収穫時期になると、毎日貴腐化した葡萄を一粒一粒摘まなければならないということです。そのため収穫には長期間を要します。収穫時期の違う葡萄は状態も違うので、同じ樽で発酵させることは出来ません。糖分は発酵によってアルコールに変わりますが、その際、アルコールは葡萄液中で一定量を越えると、発酵を止めてしまいます。普通のぶどう液よりもずっと糖度の高いぶどう液ですから、糖分を多く残したまま発酵が完了するので、出来るワインも非常に濃縮した甘いものになるわけです。
葡萄の貴腐化は、日中はカラリと晴れ、夜霧が発生するという微妙な気候(ミクロ・クリマ)により偶然生じる一種のカビによって進みます。アレクシス・レシーヌ氏曰く「ぶどう畑の端から端まで、3〜10回にわたって人手で摘み取る必要がある。この方法を機械化する方法は無い。夏の最後の週から秋の初めにかけての天候不順は、いとも簡単にほとんどの収穫を駄目にしてしまう。このワインは瓶詰めする前に樽で3年間は寝かせておかなければならない。1本の樹でせいぜいグラス1杯のワインが出来れば成功のほうなのだ」。これはボルドーの貴腐ワイン、ソーテルヌの話ですが、20〜30年は言うに及ばす、1世紀を越えても素晴らしい「天使の歌声」のような味わいを保ちつづけるのがソーテルヌの貴腐ワインなのです。
ドイツにはもうひとつ気候の特徴を生かして造られた甘口のワインがあります。このワインはアイスヴァイン(アイスワイン)と呼ばれ、文字通り氷に覆われたぶどうから造られます。完熟したぶどうを摘まずに、霜の降りる寒い時期までおいておき、寒波が来てぶどうが氷結したら摘み取り、果汁を搾ります。氷結することでぶどうの水分が抜け、糖分が凝縮されます。ぶどうの実が凍っているうちに行う作業ですから、摘み取りは最も寒い時期を選び、明け方のいちばん気温の低い時間に行います。
イタリアでも、地中海性の温暖な気候を利用して甘口のワインが造られています。摘み取った葡萄を干して水分を蒸発させ、糖度があがったもので造ります。これは、実はギリシャ時代から続くワインの製造法なのです。
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