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【家元列伝】第10話「家元、家を失う!?語録Tシャツ、まさかの炎上商法疑惑!」

公開日:2025/05/27 更新日:2025/05/28
――炎上。それは、“言葉”にとって最大の試練かもしれへん。 どれだけまっすぐに投げたひと言でも、誰かの“都合”で、燃やされる時がある。届いたはずの言葉が、今――否定されようとしている。 信じてきた語録に、背中を押せるのか?第十話、家元、最大の危機へ――。
ある朝、マスターが手にしたスマホを見て青ざめた。 「……家元、やばいっす。“バズって”るっす」 「それはいつものことやろ」 「ちゃうんす。“燃えてる”んす!!」 家元が受け取ったスマホの画面には、大手ニュースサイトの記事が。 【話題】人気語録Tシャツに「弱者ビジネス」疑惑!?“迷うな 言い訳や”“動け、黙ってる間に抜かれてる”など、強い言葉で売上を伸ばす謎のTシャツ職人“家元”に、「精神的に追い詰めるような表現」「社会的弱者を煽っている」などの批判の声が…… 「……ほう。ついにきたか」 家元は、どこか達観したような顔でつぶやいた。 マスターは焦る。 「いやいや、“言葉狩り”もここまできたら暴力っすよ! 今まで支えてくれたお客さんは……!」 そのとき、SNSの通知が鳴る。 「……あ、これ。やばい。もう“住所特定”されてるっす……!」
その日の午後、アトリエに届いたのは“抗議メール”と“無言の着払い返品”。数年前に作ったレア語録Tシャツも、一緒に突き返されてきた。 「……『これはあなたの言葉じゃない。もう響かない』、だと」 家元は、何も言わず箱を閉じた。 その夜、アパートの大家から電話が来た。 「すまん、家元さん。ちょっとウチにも苦情が来ててな……一旦、引っ越しお願いできへんやろか」 静かに、ガチャンと受話器を置く音が響いた。マスターが、何も言えないままそこにいた。
翌朝。 家元は段ボールに包まれたTシャツを見つめながら、ふとつぶやいた。 「“売れたら叩かれる”ってのは、しゃーない。でも、“届いた言葉”まで否定されるのは……キツいな」 「……でも、家元が言ってたじゃないっすか。“語録は、味方を増やすためやなく、信じたやつの背中を押すためにある”って」 「せやな。忘れとったわ。……自分の語録に背中押されんかったら、本末転倒やな」 マスターの紹介で、家元はバーJOJOの倉庫を一時的な住まいにすることになった。 段ボールと語録の山に囲まれながら、家元はノートを開く。 そこで、久しぶりに手が止まる。言葉が出てこない。いつもなら降りてくる“ひとこと”が、今日は一切浮かんでこない。
沈黙の夜。 マスターが静かに声をかけた。 「……家元、“書けないとき”は、書かなくていいっすよ。俺たちが背負うっす。“着て歩く”から。言葉が来るまで、俺らが運ぶっす」 家元は、黙ってうなずいた。 翌朝。 マスターが勝手にSNSに投稿した一文が、ゆっくりと拡散され始めていた。 《俺は家元の語録で、自分を信じられた。誰が否定しても、俺の中の“あの一言”は、今も生きてる。 着てるだけで、ちゃんと息してる。》 #語録は言葉じゃない #証明だったんだ そして、それに呼応するように、“過去に語録に救われた人々”が次々とコメントを残し始めた。 「就活で落ち込んだときに着てたTシャツ、まだ捨ててません」 「家元語録で、会社辞める決心ついた」 「別れたあの日、涙ふいたのが“笑われたまま終われるか”のタオルだった」 ゆっくり、ゆっくりと“火”は消えていった。家元は倉庫で、一言だけノートに記した。――《本当に残るもんは、燃えへん》

<<つづく>>

バズるより、燃える方が速いこの時代で。誰かに届いた言葉まで、“消されてしまう”時代で。 それでも――残るものがある。 家元が書きたかったのは、“流行”やなく“証明”。燃えてもええ。残るひと言が、本物の語録や。 【次回予告】 段ボールに囲まれた倉庫の夜。家元がふと手に取った一冊の古いノート――そこには、少年時代の未熟な言葉たち。 「この言葉、どこから出てきたんやろな……」 父との確執、母の死、拾ったノート、そして最初の語録。“語録職人”が生まれた日が、ついに明かされる。 家元烈伝 第十一話『語録のルーツ、明かされる。家元、少年時代の記憶と向き合う』 始まりは、いつも傷の中にあった――。