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【家元列伝】第4話「元カノ登場!語録で救え、恋と過去!」

公開日:2025/05/20 更新日:2025/05/22
言葉は時に、過去さえ呼び戻す。忘れかけていた“あの時の気持ち”を、語録はそっと胸の奥に投げかけてくる。 逃げていたのは、あの人か。それとも、自分自身か。
夕暮れ時のバーJOJO。 客もまばらな平日の午後、家元はいつものようにカウンターの端で、ノートに語録を書き溜めていた。 「家元さぁん、今日の語録は?」 マスターがアイスコーヒーを持ってきながら覗き込む。 ページにはこう記されていた。 ――《諦めるな。間違ってたのは選んだ日じゃなく、やめた日や》 「これは……けっこう重めっすね」 「今日の風がな、ちょっと湿っぽい。そん時は“思い出系”が降りてくる」 そのとき、バーのドアがカラリと開いた。 「……お久しぶり」 立っていたのは、どこか懐かしい空気を纏った女性だった。黒のジャケットにジーンズ、くたびれた鞄を提げたその姿に、家元の手が止まる。 「……里菜」 空気が一変した。 マスターは驚いた表情で二人を見比べる。 「え、知り合いっすか……? え、もしかして、元カノ?」 「元」 「元や」 二人の声が重なった。 里菜はカウンターに腰を下ろすと、少し笑って言った。 「この店、たまたま入っただけなんだけど……あなたがいるとはね…」 「匝瑳で“語録Tシャツ”って聞いたら、大体ワシやからな」 「……変わってないね。あなた、昔からそうだった。語録で人を黙らせるのが得意だった…」 マスターは空気を察して、そっと奥のキッチンに引っ込んだ。
沈黙のあと、里菜が口を開いた。 「今、SNSで“家元”って話題になってるの見て……たまたま目にしたの。《無職ちゃう。まだ途中や》ってTシャツ。……泣いたよ」 「泣くほどのもんかいな」 「泣くほどよ。私さ、東京のデザイン会社辞めて地元戻ってきたの。10年、ずっと頑張ってたけどさ。頑張りすぎて、壊れた。もう何もやる気しなくなって、1ヶ月ずっと家に引きこもってた」 家元は黙って、グラスの氷をカラリと鳴らす。 「……あの時、貴方が“お前の夢は俺が着て歩く”って言ったの、覚えてる?」 「貴方がくれた初めてのTシャツ、今でも持ってる……あれ、私の人生のピークだったな」 里菜の目に、薄く涙がにじんでいた。 その夜、バーの営業終了後。 店内には、家元とマスター、そしてまだカウンターに残る里菜の三人だけ。 「……俺、ちょっと言っていいすか」 マスターが思い詰めた顔で言った。 「俺、ずっと前から里菜さんのこと、知ってたっす。SNSの投稿とか、見てた。絵も言葉も、すごく刺さってて。何度も救われたっす」 里菜は驚いたように目を見開いた。 「だから、今日こうして会えて……何かしたいって思うっす。でも、俺には語録もないし、絵も描けない。あるのはこのTシャツだけっす」 マスターは、着ていた語録Tシャツを脱ぎ、里菜に手渡した。 ――《笑われたまま終われるか》 「俺、家元みたいにはなれないっすけど……この言葉、俺が本気で信じてる一枚っす」 里菜はTシャツを胸に抱き、声を詰まらせながら笑った。 「……ありがと。なんか……また描いてみようかなって、ちょっと思った」 店を出ていく里菜の背中を、家元とマスターは黙って見送った。 「……昔はな、里菜の夢を着て歩くって言うたけどな」 家元がぽつりと言った。 「今は、自分の夢を背負うんが精一杯や」 「でも、その夢は周りの人を背負ってるっすよ。今日もまた、ひとり救ったっす」 家元は、夜風に髪をなびかせながら、ゆっくりとうなずいた。 そして、新しいページをノートにめくる。そこに記した言葉は ――《夢をしまうな。誰かがまだ、それを着たいと思ってる》

つづく

語録はただの言葉じゃない。誰かの“過去”を肯定し、誰かの“明日”を押し出す――そんな力がある。忘れかけた夢も、くたびれた情熱も、誰かの一言でまた灯ることがある。そして家元は、その灯を“着られる言葉”として世に放ち続ける。 救うのは、人でも名声でもない。ただひとつ――「立ち止まってしまった魂」に、もう一度“歩き出す言葉”を贈るために。今夜もまた、語録が一枚、生まれる。 次回―― 「ローカルTV出演依頼!?家元、メディアと対峙す!」 映されるのは言葉か、キャラか?家元、テレビの枠に収まりきるのか――
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2026/09/04
バスアマ
男性
60代
趣味のルアー釣りに使います。ユニークなデザインの文字でありながら目立ちすぎないところが気に入っています。今回で2着目ですがコスパの良さもお気に入りです。
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更新日09/05(08/29〜09/04集計)