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海老の概念が変わる。奇跡の逸品、幸福堂の車海老

公開日:2026/04/14 更新日:2026/06/03
執筆:天草市ふるさと納税サポート室 大塚 熊本県・天草市河浦町。 青く澄んだ海のそばに、“別格の美味しさ”と評される、ブリッブリで甘い車海老の養殖場があります。 背景にあったのは、35年積み重ねてきた養殖技術と、“味の本質”への徹底したこだわりでした。 ただ美味しいだけでは終わらない。 「また食べたい」と思わせる理由を、天草で聞いてきました。
目次 ・天草という“奇跡の環境”から生まれる旨さ ・海老を鍛える、円形・楕円形の養殖池 ・臭みを残さない、徹底したリセット管理 ・甘みを育てる、高濃度プランクトン ・活きたまま届ける、緻密な出荷技術 ・進化し続ける幸福堂の挑戦と、次の世代へ

天草という“奇跡の環境”から生まれる旨さ

四方を海に囲まれた天草は、車海老養殖発祥の地。 潮の満ち引き、海水の透明度、豊富な栄養―― どれをとっても、車海老にとって理想的な環境が揃っています。 しかし幸福堂は、“環境に頼るだけでは終わらない”選択をしました。 「この環境を、どう超えるか」 その問いに向き合い続けた結果が、今の“別格の美味しさ”へとつながっています。

海老を鍛える、円形・楕円形の養殖池

一般的な養殖施設では、四角い生け簀が使われます。 効率よく管理するための、いわば合理的な形です。 しかし幸福堂は、その常識を疑いました。 ヒントになったのは、祖父の言葉。 「海流が速いところの魚はうまい」 だったら、養殖池の中に“流れ”を作ればいい。 そうして生まれたのが、円形・楕円形の養殖池です。 水流をコントロールしやすいこの形に加え、池の中には水車を設置。 さらに、稚魚の時期はあえて水車1台で緩やかな流れを作り、成長に合わせて台数を増やしながら運動量を調整していきます。 こうして海老は、常に適度な負荷の中で泳ぎ続けます。 その結果、生まれるのは、身の締まった弾力のある肉質。 口に入れた瞬間の“ブリッ”とした食感は、この環境から生まれていました。 しかも、この養殖池は設計から施工まで社長自らが手がけたもの。 現在8つある養殖池も、ひとつとして同じ形はありません。 試行錯誤を重ねながら、今も進化を続けています。

臭みを残さない、徹底したリセット管理

どれだけ新鮮でも、ほんのわずかな泥臭さで評価が変わるのが車海老です。 幸福堂は、その原因を徹底的に排除します。 出荷後の養殖池は、毎回ほぼゼロの状態までリセット。 砂の中に蓄積されたエサの残りや海老の排泄物などの有機物を、丁寧に洗い流していきます。 ホースで海水を流し込み、砂の中まで洗浄する作業は、想像以上の重労働。 さらに、洗浄後は砂を天日干しにし、状態を整えます。 これを年に2回。 季節ごとに管理方法も変えながら、常に最適な環境を維持しています。 効率だけを考えれば、決して楽な方法ではありません。 それでも続けるのは、“味に直結する”から。 その徹底した管理によって生まれるのが、雑味のない、透き通るような甘さです。

美味しさを育てる、高濃度プランクトン

車海老の味は、「育ち方」で決まります。 幸福堂がたどり着いた答えは、“自然以上の栄養環境をつくること”でした。 そのために育てているのが、自社培養の高濃度プランクトンです。 その濃度は、一般的な自然海域と比較して20倍以上。 さらに、配合飼料とのバランスも細かく調整し、過不足のない栄養環境を整えています。 これにより、養殖池の中には“自然の食物連鎖”が再現されます。 海老は一年を通して、生きた栄養を取り込みながら育っていきます。 その過程で、身にはアミノ酸がたっぷりと蓄えられていきます。 だからこそ生まれるのが、濃厚な甘みと深いコク。 噛むほどに旨みが広がり、後味には雑味が残らない。 殻の縞模様まで美しく、見た目にも力強さを感じさせる車海老。 その一尾には、“育て方の違い”がはっきりと表れていました。

活きたまま届ける、緻密な出荷技術

どれだけ良い海老でも、届け方ひとつで価値は変わります。 幸福堂が最後までこだわるのは、“状態”です。 出荷のタイミングは、季節によって変わります。 冬は水温が低いため朝に水揚げ。 夏は水温が高いため、夜間に作業を行います。 さらに低温水槽で海老を落ち着かせ、輸送に適した仮死状態へ。 おがくずも事前に冷却し、最後まで海老にストレスを与えない環境を整えています。 水温は、外気温の変化を見越して細かく調整。 近年の猛暑にも対応するため、梱包方法や管理体制も日々アップデートされています。 箱を開けた瞬間、ピチピチと跳ねる。 その“当たり前ではない当たり前”を守るために、細かな温度管理や梱包技術が積み重ねられていました。

進化し続ける幸福堂の挑戦と、次の世代へ

創業35年。 それでも、ここは完成形ではありません。 丸い養殖池にこだわり、環境そのものを磨き続ける養殖。 その先にあるのは、「もっと美味しい」を更新し続けるための工夫と挑戦です。 さらに近年は、車海老の干物やせんべいといった加工品の開発にも力を入れています。 小さな海老にも価値を与え、一年を通して届けられる形へ。 それは“無駄を出さない”という思想であり、 「より多くの人に味わってほしい」という想いの表れでもあります。 実際に、その一尾に感動し、北海道から遠く離れた天草まで訪れた家族もいるそうです。 美味しさが、人を動かす。 ここで生まれる味が、誰かの記憶に残り、また次の人へと広がっていく。 そして今、2代目として現場に立つ山崎さんは、次の未来を見据えています。
養殖の可能性を広げ、見学や食体験を通して、生産者と消費者がつながる場所をつくること。 「美味しいものを食べて、幸せになってほしい」 その想いを、天草から全国へ、そして世界へ届けていくために。 この海、この環境だからこそ生まれる味があります。 口に入れた瞬間に弾ける弾力。 噛むほどに広がる、濃厚な甘み。 その一尾には、35年分の挑戦と、誰かを幸せにしたいという想いが詰まっていました。

▼ピチピチの車海老

▼幸福堂の車海老

▼ 天草からのおたより