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しもうら弁天会が紡ぐ、地域の未来

公開日:2026/04/01 更新日:2026/06/03
執筆:天草市ふるさと納税サポート室 大塚 地域再生大賞を受賞した、しもうら弁天会。 コロンとかわいらしい土玩具(どろがんぐ)を生み出す、その活動が高く評価され、地方新聞47紙とNHK、共同通信が主催する「第15回 地域再生大賞 ~今、ここで暮らしたい 切り拓くエネルギー~」で優秀賞を受賞しました。 地域を動かす原動力とは何か。 その想いを知るために、しもうら弁天会の宗像さんにお話を伺いました。
■ 目次 ・はじまりは、地域の歴史を知ることから ・土玩具づくりが始まったきっかけ ・ゼロからの挑戦 ・手のひらに宿る、やさしい縁起物 ・人をつなぎ、地域をつなぐもの

はじまりは、地域の歴史を知ることから

しもうら弁天会の始まりは「学び」から、そして「使命」へと変わっていきました。 九州大学による下浦町のフィールドワーク(2014年~2016年)に参加した宗像さんをはじめとする地域住民は、天草・下浦の歴史に触れたことをきっかけに、この地域の価値に気づきます。 これが、すべての原点となりました。 「下浦石工」や「弁天石切丁場跡地」——この地に息づく文化を知る中で、“この宝を未来に残したい”という想いが芽生えました。 九州大学の藤原教授とともに、韓国(余美里村)で歴史と文化を学ぶ研修にも参加。 この経験を通じて、仲間との絆はさらに深まりました。 その想いが結実し、2017年、「弁天石切丁場跡地」を後世に残すことを目的に、賛同する住民有志数人でしもうら弁天会が立ち上がりました。 活動する中で、柑橘農家からの提案で規格外果実を活用したジュースの商品化に挑戦し、地元イベントをはじめ各所で好評を得てヒットし、収益化にも成功しました。 活動資金を得るとともに、しもうら弁天会の仲間と乗り越えた経験から活動の幅が、文化継承に加えて、地域活性化へと広がりました。 ※弁天石切丁場跡地は、下記写真。 下浦の石工は、国指定重要文化財「祇園橋」をはじめ、長崎のオランダ坂などの建設にも関わっていました。 石の柱の上に小屋掛けをして、石材を切り出す作業をしていた場所。

土玩具づくりが始まったきっかけ

活動が動き出した頃、一つの転機が訪れます。 天草出身で、当時パワープレイス株式会社のデザイナーだった若杉浩一さん(現・武蔵野美術大学教授)が、「天草を“土人形の島”として復活させたい」という想いから、手のひらサイズの土玩具「めじろおし」をデザインしました。 その作品が無印良品の正月福缶に採用され、1,000個の製作決定が舞い込みました。 しかし—— 天草土人形の担い手である天草土人形保存会は高齢化により製作が困難な状況。 「誰がつくるのか?」 答えは一つでした。 「じゃあ、自分たち(しもうら弁天会)で作ろう。」
※天草土人形(どろ人形) ・・・300年以上の歴史を持つ伝統的な郷土玩具。  土玩具(下浦土玩具) ・・・天草土人形の技術を受け継ぎ、後世に残すために現代的に再デザインされた作品。 熊本県天草市下浦町では、「土」を「どろ」と読みます。原料である泥(粘土)を強調した呼び名が定着したといわれています。

ゼロからの挑戦

メンバーのほとんどが、人形制作未経験。 すべてが手探りのスタートでした。 従来の天草土人形保存会が製作する「天草土人形」はサイズが大きく、小型の「めじろおし」を同じ方法で作ることはできません。 天草土人形は、江戸時代から伝わる表裏2枚組の型に粘土を指で押しつけてつくる手押し製法。 この方法では、めじろおしのサイズが小さいためにうまくできないことが分かります。 型づくりも、絵付けも、すべてが未知の領域。 そこで協力してくれたのが、知り合いの歯科技工士。 歯科用石膏の技術を応用し、小さな型づくりに挑戦しました。 表裏2枚組の型を使い、2枚をくっつけてできた空洞の中に、ドロドロの粘土を流し込んで成形する「鋳込み製法」へといきつきます。 それでも、簡単にはいきません。 筆がうまく走らない、表情が揃わない——。 そんな中でも多くの人の手を借りながら、1,000個すべてを手作業で完成させました。 この経験こそが、弁天会の原点となりました。 作業場所もゼロからのスタート。 元・米屋を自分たちの手で片付け、壁を壊し改修し、工房へ。 現在も技術とデザインは、日々進化し研鑽を続けています。

▼製作風景

手のひらに宿る、やさしい縁起物

しもうら弁天会の土玩具は、すべて手作り。 ひとつひとつ筆で描かれており、それぞれに少しずつ異なる表情があります。 縁起の良いモチーフや言葉をテーマに、見る人の心が和らぐようなデザインが特徴です。 中でも話題となったのが「アマビエ」。 疫病退散の願いを込めて制作され、コロナ禍で大きな反響を呼びました。 「願いを込めて手元に置きたい」と広がり、累計5,000個以上を制作する人気作品に。 宗像さんはこう語ります。 「ふっと笑えるようなものを作っていきたい」 その言葉どおり、今も新しいデザインが次々と生まれています。

人をつなぎ、地域をつなぐもの

しもうら弁天会の活動は、ものづくりだけではありません。 ・地元小学生への体験活動 ・地域外の若者との交流、民泊の受入 こうした取り組みを通じて生まれた「つながり」は、やがて天草への移住にもつながっています。 2022年から武蔵野美術大学が関わる産学プロジェクトの一環として、毎年大学3年生が天草に1ヶ月程度滞在。 暮らしや産業などを体験するのを、積極的にしもうら弁天会が受け入れ。 この取り組みをきっかけに、東京や埼玉、神奈川をはじめ、県外からこの地へ移住。 人と人がつながり、想いへの共感が少しずつ広がっていきました。 その結果、現在では会員は33名(2026年時点)となっています。 世代を超えて、その輪はこれからも広がり続けていきます。

▼しもうら弁天会の土玩具と体験

▼ 天草からのおたより