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鶏ファーストで育てる幻の地鶏「天草大王」~ヤキトリマン~

公開日:2026/05/22 更新日:2026/06/09
執筆:天草市ふるさと納税サポート室 大塚 「最初に天草大王の肉を口にした時、衝撃やったんですよ。」と語るのは、地鶏「天草大王」を飼育するヤキトリマンの田口さん。 力強い歯ごたえと、噛むほどに広がる旨み。 その味に惚れ込み、自ら天草大王を育てるようになりました。 自社の焼き鳥店「ヤキトリマン」を営みながら、飼育歴は10年。 そこには、数々の試行錯誤と、日々の地道な積み重ねがありました。 今回は実際に飼育現場を訪れ、田口さんに話を聞きました。 目次 ・幻からの復活~天草大王とは ・味を決めるのは、「育つ環境」 ・ストレスを減らすことが、味を育てる ・餌の失敗が教えてくれたこと ・命を預かるということ ・地域に根差し、未来へつなぐ味

幻からの復活——天草大王とは

かつて熊本には、「天草大王」と呼ばれる日本最大級の鶏が存在していました。 その美味しさと肉質の良さから、主に博多の水炊き用として珍重され、多くの人々に愛されていました。 しかし、大型で産卵率が低いという特性や、輸入種の普及の影響により、昭和初期に絶滅。 一度、その歴史は途絶えてしまいます。 その後、熊本県農業研究センターが約10年の歳月をかけて研究を重ね、ついに復元に成功。半世紀ぶりに“幻の地鶏”は蘇りました。 「大王」の名にふさわしく、最大の雄は背丈約90cm、体重約7kgという堂々たる体格を誇ります。 大きさだけでなく、力強い歯ごたえと、噛むほどに広がる旨みで、一流の食の現場でも高く評価されています。 また、天草大王は地鶏JASを取得しており、ヒナの素性や飼育方法などが厳密に定められています。 ヤキトリマンファームを含む熊本県内の指定農場では、生後120日以上、1平方メートルあたり7〜10羽以下の低密度で平飼いされる環境が必須です。 ヒナも指定されたふ化施設から導入し、丁寧に育てられています。

味を決めるのは、「育つ環境」

地鶏の味は、血統だけでは決まりません。 どんな環境で育ったか——それが大きく影響します。 ヤキトリマンファームは、柑橘畑の後に建てられた鶏舎で、傾斜のある土地に建てられています。 特に重要なのが、「空気」と「空間」。 鶏舎はあえて細長く作られ、風が一方向に抜ける構造になっています。 「空気が溜まらんようにする。それだけでも全然違う。」 鶏舎内には大型の扇風機が設置され、常に空気が循環するよう工夫されています。 さらに、餌の食べ残しや糞の清掃も徹底。 実際、鶏舎内の匂いが気になるということはありませんでした。 目に見えない空気を整えることが、健康な鶏、そして美味しい肉づくりにつながっています。

ストレスを減らすことが、味を育てる

鶏は、想像以上にデリケートな生き物です。 驚きや不安を感じると、群れ全体が一気にパニックになることもあります。 最悪の場合、密集してしまい圧死することさえあるそうです。 だからこそ、この農場では「元気だけど、穏やかに育てる」ことを大切にしています。 ・自然の木々を活用し、光の強さを調整する ・鶏舎の屋根に断熱材を設置する ・扇風機で室温を管理する ・ヒナの時期は特に保温を徹底する ・穏やかな音楽を聴かせる 「小さい頃からの育て方で、性格まで変わる。」 その言葉の通り、日々の積み重ねが、最終的な肉質にも影響していきます。 また、鶏が落ち着いて育つ環境づくりの一環として、音楽も取り入れています。 出荷前の鶏舎には、天草出身のWANIMAの曲が流れています。 「WANIMAの曲に感動した。だから鶏にも聴かせて、肉の味を通じて感動や共感を届けたい。」 そんな想いが込められていました。

餌の失敗が教えてくれたこと

飼育の中で、忘れられない出来事があったといいます。 それは、餌を制限したときのこと。 コストを抑えながら育てるため、“最小限で最大限に育てる”という挑戦をした結果—— ある日、鶏たちの様子が一変しました。 群れの中で異常行動が起き、気づいた時には、200羽近くが命を落としていたのです。 「地獄やった。」 その経験から学んだのは、シンプルなことでした。 満たされることが、健康につながる。 空腹はストレスになり、ストレスは行動に現れ、やがて命にまで影響する。 それ以来、餌は“削るもの”ではなく、“整えるもの”として考えるようになりました。 成長期の餌づくりはもちろん、出荷前の1ヶ月はトウモロコシや米ぬかの配分を増やし、旨みと肉質を整えています。

命を預かるということ

飼育現場は、想像以上に繊細です。 わずかな温度差。 群れの密度。 ちょっとした驚き。 そのすべてが、命に直結します。 「10分目を離しただけで、状況が変わることもある。」 特にヒナの時期は、温度管理が命綱です。 寒さで固まり、そのまま圧死してしまうこともあります。 だからこそ、常に観察し、異変を見逃さないことが求められます。 田口さんは、「鳥ファースト(アニマルウェルフェア)」の飼育を心がけていると語ります。

地域に根差し、未来へつなぐ味

「地元の味は、最強の価値になる。」 旅先で食べたものが記憶に残るように、その土地の味には、人の記憶に残る力があります。 「天草に来たら、天草大王を食べる。」 そんな存在にしたい——。 通常のブロイラーが約50日で出荷されるのに対し、天草大王は120日〜150日という長い時間をかけて育てられます。 しかし、育てすぎれば、メスは脂がつきすぎ、オスは肉が固くなる。 だからこそ、毎日状態を見極めながら出荷のタイミングを判断しています。 田口さんは、飲食店「ヤキトリマン」でお客様の反応を直接聞き、自ら調理し、食べることで、肉質や旨味を磨き続けてきました。 「食べた瞬間の感動を、皆様に届けたい。」 今後はレトルト機も導入し、さらに商品開発を広げていく予定とのこと。 天草の風土と、人の想いが育てた地鶏「天草大王」。 ぜひ一度、その味をご賞味ください。

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