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咲き誇れ、未来をつなぐ応援の花。徳島“応援花”プロジェクト 第二回

公開日:2025/08/22 更新日:2026/01/08

第2回:花農家の情熱、四国の地へ

星野さんが四国の徳島へ

2025年7月16日、例年より早く梅雨明けを迎えた徳島県。まだ盛夏には少し早い7月の空に、季節外れの入道雲がもくもくと湧き上がり、カラッとした暑さが町を包みます。 群馬県前橋市から約450キロメートル離れたこの四国の地に、カーネーション農家の星野さんが来県されました。 車なら約6時間、飛行機を使っても4時間はかかる距離ですが、彼の情熱はこの距離をものともせず、花と未来をつなぐ架け橋となろうとしています。

人口減少の波と地域の未来

日本全国で進む人口減少の波は、ここ徳島県にも確実に押し寄せています。 私自身、同級生や先輩たちがかつて通っていた母校が他校と統合され、今ではもう存在しないと聞いたときは、寂しさとともに、地域の未来への一抹の不安を感じました。 そんな中たくさんの特色を掲げる県内の高等学校の中で、農業に特化した教育を続けている学校の存在は、今やとても貴重です。 特に、徳島県立城西高校のように、地域とともに農業の未来を考え、実践している学校は、地方にとっての希望の種そのものだと思います。 今日(こんにち)の日本では、365日、24時間、食べ物が飽和状態になっております。 旬でもない食べ物も「あるのが当たり前」と思われがちな一方で、その多くを輸入に頼らざるを得ない現実があります。 だからこそ、国内で作る価値、育てる喜び、それを適正な価格で流通させる意義――そういったことを、消費者としてだけでなく、一人の母親としても、日々強く感じています。
若い世代が「農」に関心を持ち、地域と手を取りながら育っていく姿は、食と暮らしの未来を守る確かな光。 生きることは「食べること」。 自然が相手の業界であり、高校生のほうが敏感な部分もあります。 城西高校は、そんな希望を育む“場”であると、心から感じています。 私がかつて県内のイベントで出会った、キラキラした瞳で学校の魅力や生産物の説明を語る生徒たちの姿が忘れられず、社内で提案し、念願の連携が実現しました。 前回のコラムでも触れましたが、星野さんがボランティアとして1年で指導できる高校は全国でたったの1校のみ。 城西高校は、その貴重な“応援花プロジェクト”のパートナー校として名乗りを上げてくれたのです。 学校のすぐ近くを流れる鮎喰川(あくいがわ)は、清らかな水をたたえる四国山地の吉野川の支流。吉野川は別名、四国三郎(しこく さぶろう)の名を持ち、日本三大河(日本三大暴れ川)の一つであります。 その流れは、地域の豊かな自然と文化を育み、「雨乞いの滝」などの名勝も抱える場所です。 現在、約460名の生徒が学ぶ城西高校。今回のプロジェクトで中心となるのは、草花や地域の伝統工芸作物である藍の栽培、植物バイオテクノロジーの基礎を学ぶ植物活用科の20名の2年生たち。メインで携わってくれる生徒さんは、うち8名だそうです。

応援花プロジェクト始動!

彼らは、植物が社会に果たす役割を深く理解し、地域の文化や生活空間の創造に貢献する人材を目指しています。 生徒自らが育てた作物や花苗を販売する直売所も開設されており、地域と次世代の架け橋としての役割も担っています。 そんな若者たちの挑戦を、私たちはこれからも応援していきたいと思います。 「どうせ、徳島やけん」「田舎だからこういうんできん」と鼻からあきらめるのではなく、地域の資源を活かし、伝統を受け継ぎながら、最新の技術や知識を積極的に取り入れ、全国に誇れる花づくり、農業の新しいカタチを追求しています。 城西高校の若き挑戦者たちは、まさに“徳島応援花プロジェクト”の名前の通り、未来を応援し、地域を元気にし、そして自分たち自身の成長を花開かせようとしているのです。

花づくりに潜む自然との駆け引き

生徒たちはちょうど夏休み前ということもあり、今回は担当の先生にお話を伺いました。 ――なぜ、応援花サキーネの栽培を引き受けてくださったのですか? 先生「もともと栽培していたサイネリアですが、近年の異常気象の影響で、開花のタイミングが合わなくなってきていたんです。 管理し、育てる手間もかかるようになり、“思ったときに咲いてくれない”というのは、教育現場でもなかなか悩ましい課題で……。 そんな中で、『サキーネ』という丈夫で調整もしやすい品種を知り、“応援花”としてのコンセプトや可能性に魅力を感じたのがきっかけです。」 この“気候の読みづらさ”については、生産者である星野さんも大きくうなずきます。 星野さん「自然を相手にするって、ほんとに難しいよね。 ギフト用の花って“いつまでに咲いてほしい”っていうのが必ずある。 でも、その『いつまでに』を自然を相手にしながら調整するのって、実はとっても大変なんだよ。 贈ってもらった花を育てることで、“贈り主の想い”を改めて感じられる――そこが花の贈り物の素晴らしさだと思ってる。 でも、その背景には、想像以上の調整力と経験が必要なんだよね。」 星野さんの花づくりに対する哲学は、ただ“教える”にとどまりません。

一緒に育てる、そのまなざし

続けて、星野さんが言います。 「例えば、九州の人が“今日は寒いねえ”って言ってても、群馬の感覚では“まだ半袖で大丈夫”なんてこともある。 同じ日本でも、気温の感じ方、水のpH、日照時間――全部違う。 水の成分ひとつで、花色が微妙に変わることもあるんだよ。」 机上のマニュアルでは教えきれない、現場でしか得られない感覚。 同席していただいた先生方も思いが重なる部分があったのか、大きくうなずきました。 星野さんのことばのひとつひとつに、花農家としての経験と、これからの未来を支える若者への本気の思いが滲み出ていました。 学校の温室を訪れた星野さんは、栽培中の苗に目をやると、ふとこう尋ねました。 「この土、どんなブレンド使ってる? ちょっと見せてもらってもいい?」 先生が説明を始めると、星野さんはすぐに腰を落とし、実際に土を手に取りながらじっくりと確かめ始めました。 配合のバランス、粒の質感、湿り気――そのすべてに感覚を澄ませるように、丁寧に触れていく姿は、まさに“職人”そのものです。 「ふむ、なるほどね。肥料も混ぜてる? ちょっと軽めに仕上げてるのかな。 でもこれなら根の張りも悪くない。 風通しはどうかな? 温度管理は?」 そんなふうに問いかけながらも、決して“指導”という上からの姿勢ではなく、あくまで「一緒に考える」「一緒に育てる」スタンス。 その自然体な向き合い方に、先生とも率直なやりとりが交わされていく様子が印象的でした。 星野さんのやり方は、育て方の“正解”を教えるのではなく、現場ごとの環境を読み取りながら“最適解”を見つけるサポートをすること。 だからこそ、こうして手を土に汚すことをいとわず、まず「見せてもらえる?」と尋ねるところから始まるのです。

生徒の未来を咲かせる想い

打ち合わせの終盤、星野さんはこう言ってくださいました。 「もしよかったら、この土、少しもらって帰って育ててみようか?」 突然の申し出に私は驚き、 「すごいですね!土まで持ち帰って育てるなんて、情熱的ですね。」と思わず口にしました。 すると星野さんは、少し照れたような笑顔でこう返してくれたのです。 「いや、違うんだよ。これからさ、生徒さんたちがたくさんの鉢花を育てるわけでしょう? せっかく一生懸命、育てようとしてるのに、うまくいかなくて枯れちゃったら悲しいじゃない。生徒も、花苗もね。 だから、まずは自分がこの土でどう育つか試してみたいんだ。彼らが真剣に学ぼうとしてるのに、こっちがテキトーなことしちゃいけないからさ。」 言葉のひとつひとつに、生産者としての責任感と、教育に対する真摯な想いがこもっていました。 星野さんにとって“育てる”という行為は、ただ花を咲かせることではなく、人の未来を咲かせることと同義なのだと感じた瞬間です。

秋に始まる定植と新たな一歩

なお、苗の定植(植え付け)は、まだまだ暑さが残る徳島の気候を考慮し、9月中旬頃から10月上旬頃を目安に行う予定です。 自然のリズムを大切にしながら、少しずつ「徳島 応援花プロジェクト」が動き出そうとしています。 私たちも心から応援し、見守っていきたいと思います。 ◆次回へ つづく(掲載中)

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_______________________________________ ■ 著者情報  コラム執筆者:花翔ちこ(はなと ちこ) 筆者プロフィール: 前職では旅行業界に従事し、国内外を飛び回る添乗員として活躍。 現在は花の世界に魅了され、株式会社花由にて商品企画を担当。 2児の母として家庭と仕事を両立しながら、日々「花のある暮らし」の魅力を再発見。花の知識はまだ発展途上ながら、花農家さんの声や販売の花に込められた想いを、自分の言葉で丁寧に届けたいと奔走中。 趣味は旅行と音楽鑑賞。好きな花はユリ、ダリア、ストレチア、アンスリウム。「読者の皆さまと一緒に、花を通して成長していきたい」という気持ちを胸に、本コラムを執筆しています。 ■ 花農家情報  花農家プロフィール: 星野 晃正さん 群馬県前橋市カスカワ・シードリング・アソシエーション代表。カーネーション栽培歴40年以上。 暖房や加湿器を一切使わない、自然の気候と土地の力を活かした“無加温栽培”にこだわり、丈夫で長持ちする品種づくりに取り組む。代表品種は応援花「サキーネ」。 花業界全体の未来を見据え、全国の高校生へ栽培技術と情熱を伝える教育活動も展開中。
■ 協力校情報  徳島県立城西高等学校 植物活用科 (とくしまけんりつじょうせいこうとうがっこう しょくぶつかつようか) 徳島市鮎喰町(あくいちょう)にある高等学校。 令和6年度に創立120周年を迎えた伝統ある専門高校です。 校訓に掲げる「耕心(こうしん)」――“大地とともに、心を耕す”という想いのもと、生徒たちは地域や自然、人とのつながりを大切にしながら、農業を軸とした実践教育に取り組んでいます。 農業系の4学科(植物活用科、生産技術科、食品科学科、アグリビジネス科)に加え、県内で初めて設置された総合学科があり、時代のニーズに応じた多様な学びを展開。 なかでも植物活用科では、草花や伝統的工芸作物である阿波藍(タデアイ)の栽培、植物バイオテクノロジーなどを通じて、快適な生活空間の創出や地域文化の継承に取り組んでいます。 校内には、生徒が育てた野菜や花苗を販売する直売所もあり、「育てる」から「届ける」までを実践的に学ぶ機会を提供。 特に阿波藍専攻班では、藍の栽培から染料づくり(すくも)、さらには藍染製品の開発・販売に至るまで、地域と連携しながら持続可能な産業教育を進めています。 山と清流に囲まれた恵まれた環境の中で、地域に根ざした“温かな学び舎”として、多くの若者が未来を耕し続けています。 _______________________________________ ※次回は、カーネーション農家 星野さんを通じ、高校生たちの思いや、ひとつの花が、人と人、想いと想いをどう結んでいくのか。その物語をお届けします。どうぞお楽しみに。