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たまごまるごとプリンの生みの親「北坂養鶏場」訪問記
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たまごまるごとプリンの生みの親「北坂養鶏場」訪問記
たまごまるごとプリンの生みの親「北坂養鶏場」訪問記
公開日:2026/01/19 更新日:2026/01/20
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のどかな田畑と豊かな木々に囲まれながら、日々“あたりまえ”を丁寧に積み重ねる淡路島の養鶏場、『北坂養鶏場』。「いいたまごは、いい親鳥から」を合言葉に、餌と水にこだわりながら、日本古来の鶏をひよこの時から育てあげる。そんなまっすぐな姿勢と創造的なブランディングで、養鶏という仕事に新たな価値を植え付ける話題の養鶏場。その背景を深堀ります。
北淡インターチェンジからほど近い場所にある『北坂養鶏場』の直売所。素朴なコンテナ造りなのに随所に洗練性を感じさせる佇まいは、まさに同養鶏場の在り方を体現しているよう。はたして『北坂養鶏場』とは、どんな環境で鶏を育て、どんな考え方でたまごをつくっているのか、代表の北坂さんの話とともに辿っていきます。
国産鶏4%の時代に、あえて日本の鶏を選ぶ
店内を物色していると、オーナーの北坂さんが到着。まずは『北坂養鶏場』の特徴を聞いてみました。 「うちはボクで2代目で、日本の鶏にこだわった養鶏場です。っていうと当たり前に聞こえるかもしれませんが、実はいまの日本の養鶏では、国産鶏って4%程度しかいないんですよ。なので、かなり珍しい部類だとは思います。あとは、餌は自分たちでも作っている発酵飼料を、水は淡路島の地下水を使っています」。
日本の鶏を、日本の餌と日本の水で丁寧に育てる。その積み重ねは味の違いとしてだけではなく、「どこで、誰が、どう育てたものなのか」をちゃんと知って選びたい人たちにも刺さっています。島内外から直売所を訪れる人が後を絶たないというのも納得。そんなふうに支持を広げてきた『北坂養鶏場』ですが、その道程は順風満帆だったわけではなかったそう。 2020年11月。『北坂養鶏場』は、鳥インフルエンザに見舞われました。
鳥インフルエンザの悪夢、復活への道のり
北坂さんは当時のことをこう振り返ります。 「まさか、と思いました。でも現実だった。陽性が判明したその日の夜には、飼育していた14万5千羽すべての殺処分が開始されたんです。しかも時期はコロナ禍の真っ只中。本気で廃業を覚悟しましたね。 でもありがたいことに、みなさん本当に応援してくれて、従業員も残ってくれた。関わってくれていたクリエイターの方々も、なにか手助けできないかっていろいろ動いてくれて、そこから『キトサカプロジェクト』というアートプロジェクトも始まった。そういったみなさんの支えで、なんとか乗り越えることができました」。 その当時の様子は写真に収められ、敷地内の別棟に展示されています。
「『キトサカプロジェクト』は、うちの鶏がゼロになったところから復活するまでの未来を創造するためのプロジェクトです。だけど、ボクらこんなに頑張ってますみたいなことを押し付けがましく発信するのも、どうかなーと思って。 それと同じで、実はひよこにも黄色い小さなトサカがあるんですが、あまり知られてないし知らなくてもいいし、わざわざ伝える必要もない。だけど、ひよこに興味がある人にだったら教えてあげたい。このプロジェクトもそんな風に、興味がある人にだけ届けばいいかな、という思いで始めました。だから『キ(黄)トサカ プロジェクト』なんです」。
“ただ買う”から、“その源を知る”へ
「『キトサカプロジェクト』もそうだし〈たまごまるごとプリン〉もそうなんですけど、商品開発や見せ方の工夫は、あくまで興味の入口をつくるためのもの。1番は、養鶏場のことを少しでも知ってもらって、すべてのたまごは鶏が産んでいるっていう当たり前を思い出してもらいたいんです。 そんなの当然だと思うかもしれないけど、日常の中ではそこまで意識が向かないことも多いと思うんですよ。だから少しでも養鶏という仕事を知ってもらって、ただ買って終わりじゃなく、その源にも興味を持ってもらえるようになると嬉しいですね」。
直売所から車で5分くらいの場所には、約13万羽を飼育する大型のケージ飼い鶏舎群が。通路を挟んでずらりと並ぶ鶏たち、その足元で流れていく、産まれたばかりのたまごたち。さっきの平飼いが生命活動を感じる鶏小屋ならば、こちらはまさに産業の現場。養鶏業のリアルが詰まっています。
鶏糞を資源に変えて自然のサイクルの一員へ
また北坂さんいわく、鶏舎で出る鶏糞は自社堆肥〈島の土〉として再利用・販売しているそう。さらに最近では行政と連携した取り組みで、海の環境改善にも活かされているとか。 「もちろん、むやみに海に流す話じゃなくて、行政主導のテストプロジェクトの中で、海の堆肥として提供しています。特に瀬戸内海は浅いから効果が出やすいと言われていて、実際に海苔の養殖などでは良い結果が出ていると聞いています。因果関係はこれからの部分もあると思うんですが、一次産業に携わるものとして、自然のサイクルの中で役に立てることがあるのは、とてもありがたいですね」。
北坂さんは続けます。「ボクの仕事の軸はあくまで養鶏です。鶏を育てて、たまごを産んでもらって、鶏糞が堆肥になって……そういう循環が、まずある。そのうえでそれを伝える際には、ずっと一緒にやってくれているデザイナーさんが描くブランディングや編集など、さまざまなプロの仕事が関わってくる。一次産業の現場と、そういうクリエイティブな領域が無理なく噛み合っているバランスって、すごくいいですよね。 堆肥に関しても、みなさん必ずしもサスティナブルとかを考えて選んでくれているわけじゃないと思うんですが、軽トラの荷台に〈島の土〉の袋を積んでたり、空袋を野菜入れやゴミ袋に使ってたり、そういう風景が、なんだか素敵だなって思えるんですよね」。 最後に北坂さんはこう話してくれました。「正直、養鶏ってめちゃくちゃしんどいんですよ。父が亡くなって事業を継いだばかりの頃は、自分は日本で一番不幸なんじゃないかって、いつも思っていました。だけどいまは、180度じゃなくて360度、ぐるっと1周して見え方が変わりましたね。さっきも言ったけど、一次産業として自然のサイクルの中にいられるということは、とても幸せなことだと思っています。 だからこそ一般の方にも少しだけ、たまごが鶏から産まれてるってことを思い出してもらいたい。いつでも買える身近な食品ではあるけど、そこにはちゃんと生命活動があるんだってことを思い出しながら、美味しくたまごを食べてもらえたら嬉しいです」。
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