「AGAを発症してしまったら、もう薄毛が進行するしかないのか…」と諦めかけている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご安心ください。現代医学ではAGAに対する効果的な治療法が増えており、適切な対処を行うことで症状の進行を食い止め、改善へと導く希望は十分にあります。
まずは「AGAを発症しても終わりではない」という事実から詳しく見ていきましょう。
AGAを発症しても終わりではない
AGAとは「Androgenetic Alopecia」の略称で、日本語では「男性型脱毛症」と呼ばれています。この症状は、遺伝的な背景や男性ホルモンの影響によって男性に生じる病態です。
「発症したら終わり」と思われている方がいますが、実際はそうではありません。
AGAは日々研究が進んでおり、日本皮膚科学会がガイドラインで推奨する治療法など、効果や安全性が一定確認されている対処法が存在するためです。
適切な時期に医療機関で相談し、対処を開始することで、進行を抑制し、症状の見た目を改善させることが期待できます。
※参考:日本皮膚科学会『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』
AGAを発症したら終わりと言われる理由
多くの方がAGAに対してネガティブなイメージを持つのには、いくつかの理由が存在します。
💡進行性で治療しないと悪化するため
AGA(男性型脱毛症)は進行性の疾患であり、発症後は症状が進んでいくのが一般的です。特に生え際が後退したり、頭頂部の髪が薄くなるなどの特徴的な進行パターンが見られます。
この病気は放置していても自然治癒することはなく、時間の経過とともに確実に症状が悪化していくものです。また、一度進行してしまった脱毛を完全に元の状態に戻すことは困難とされています。
こうした進行の不可逆性から、多くの人が「発症したら終わり」という認識を持つようになったと考えられます。
💡継続的な治療が必要なため
AGAは、現在の医学では「完治」が難しい疾患とされています。
AGAは男性ホルモンや遺伝が主な原因となるため、薄毛の要因を完全に排除する治療法は存在しないのが現状です。治療によって症状の改善や進行の抑制は可能ですが、AGA治療をやめると再び薄毛が進行するケースが多いです。
効果を維持するためには長期間にわたって治療を継続しなければならない点も、AGAが「発症したら終わり」と言われる理由の1つでしょう。
💡効果が出るまでに時間がかかるため
AGA治療は、長期間にわたる費用と時間の投資が必要です。
AGA治療に即効性はなく、効果を実感するまでに6ヶ月から1年程度かかるのが一般的です。この長い治療期間中は目に見える変化が少ないため、治療に対するモチベーションを維持するのも困難でしょう。
治療を継続するための経済的負担や治療に通う時間的負担が、「発症したら終わり」と感じさせる一因と考えられます。
AGAの発症要因
AGAの発症には複数の要因が関与しており、これらを理解することで適切な対策を講じることができます。
🧬遺伝
AGAの主な発症原因の1つに、「遺伝」が挙げられます。
体内の男性ホルモンである「テストステロン」が、悪玉男性ホルモンである「ジヒドロテストステロン(DHT)」へと変化する際、「5αリダクターゼ」と呼ばれる酵素が触媒として働きます。
5αリダクターゼの活性度は遺伝によって左右されるため、親から5αリダクターゼが活発に働く遺伝子を受け継いだ方は、AGAを発症しやすいとされています。
🧔♂️男性ホルモン
AGAを発症するきっかけの1つが、男性ホルモンです。
男性ホルモンの分泌量が多いと薄毛になりやすいとされますが、これは前述したようにAGAの原因が男性ホルモンであるヒドロテストステロン(DHT)であるためです。
テストステロンが5αリダクターゼによってDHTに変換されると、毛包に作用して毛髪の成長サイクルを短縮させます。その結果、毛包がダメージを受けやすくなり、髪の毛が細くなったり抜けやすくなったりするとされています。
⏰生活習慣
生活習慣の乱れも、AGAの発症や進行に影響を与えると考えられています。特に影響が大きいとされるのは、睡眠時間、食生活、ストレス、そして喫煙です。
睡眠不足や不規則な睡眠パターンは、体の健康だけでなく、髪の成長にも悪影響を及ぼします。髪の健康を維持するには、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが大切です。
また、過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、抜け毛の原因となるジヒドロテストステロンが増加する傾向があります。
喫煙は血管を収縮させる作用を持つニコチンを含むため、頭皮の血行不良を引き起こし、AGAの症状を進行させるおそれがあります。
AGAを発症した際の対策
AGAを発症してもあきらめる必要はなく、適切な対策を講じることで症状の改善や進行の抑制が期待できます。
💉治療を始める
AGA治療は、早ければ早いほど良い結果が期待できるとされています。
AGAに対する対処法には内服薬や外用薬などがあり、これらを併用することも検討できます。外用薬には市販されているものもあり、比較的選択しやすい方法の一つと言えるでしょう。
より専門的な対処を望む場合は、専門のクリニックに相談してご自身に適した方法を検討することをおすすめします。最近ではオンライン診療を提供するクリニックも増えており、忙しい方でも気軽に専門医の診察を受けられる環境が整っています。
🫧頭皮ケアをする
AGAの進行を防ぐためには、頭皮環境を清潔に保つことが重要です。頭皮が脂っぽい、フケが出るなど、頭皮環境が悪いと健康的な髪の毛が育ちにくくなります。
洗浄力の強すぎないシャンプーを使ったり、爪を立てずに優しく洗ったりするなど、正しい頭皮ケアで髪の毛が育ちやすい環境を整えましょう。
また、帽子や日傘で紫外線によるダメージを防ぐことも大切です。
🌅生活習慣を改善する
前述のように生活習慣の乱れもAGA発症の要因となっているため、AGAが発症したら適切な治療と並行して生活習慣を見直すことが大切です。
食生活の改善としては、ビタミンを含む野菜や果物、ミネラルを含むワカメやひじき、植物性タンパク質を豊富に含む納豆や豆腐などを積極的に取り入れましょう。亜鉛を豊富に含む牡蠣なども、AGA予防におすすめの食材です。
また、ストレスは頭皮の血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こし、髪の毛に十分な栄養が届きにくくなります。忙しい男性は多いですが、休日は趣味を楽しんだりリラックスできる時間を作ったりして、ストレス発散を心がけることが重要です。
AGAの治療法
AGAには様々な治療選択肢があり、個人の症状や進行度に応じて適切な治療法を選択することが大切です。
🌿外用薬
外用薬は、直接頭皮に塗布して毛髪の成長を促進する治療法です。
ミノキシジルがその代表例で、血行を促進し、毛包に働きかけることで知られています。
服用するタイプのものに比べて副作用のリスクが比較的低い傾向があり、初期の対処として検討されることが多い方法です。
日本皮膚科学会が発表している『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』では、ミノキシジルの外用に関して「行うよう強く勧める」Aランクの治療法に位置付けられており、その効果と安全性が高く評価されています。
薬局でも購入できる製品もあり、選択肢の1つとして検討しやすい方法と言えるでしょう。
※参考:日本皮膚科学会『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』
💊内服薬
内服薬は、薬を服用することでAGAの進行を抑制する治療法です。
代表的な有効成分には、フィナステリド、デュタステリド、そしてミノキシジルがあります。治療を始める際には、医師との相談の上で適切な薬を選び、副作用や長期的なリスクについても確認することが重要です。
一般的に効果が現れるまでに数カ月かかるため、継続することが成功のカギです。
外用薬と比較して、より強く発毛作用に働きかけることが期待されるミノキシジルの内服薬は、心臓への負担を考慮し、日本では一般の医薬品としては認可されていません。
しかし、専門のクリニックでは、副作用のリスクを慎重に管理した上で、医師の判断により使用されるケースもあります。
※参考:日本皮膚科学会『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』
🧑⚕️植毛
植毛は、自分自身の健康な毛髪を薄毛部分に移植する外科的治療法です。
薄くなりにくい部分である側頭部や後頭部の毛を、薄くなり始めた生え際や頭頂部などに移植します。自分の毛髪を使用するため拒絶反応のリスクが少なく、移植された毛髪は継続的に成長し続ける利点があります。
一方で、費用が高額であることや術後の回復期間が必要である点を考慮する必要があるでしょう。
💉メソセラピー
メソセラピーは、頭皮に直接薬剤や栄養成分を注入する治療法です。
頭皮に直接的に毛髪の成長をサポートする成分を届けることで、より効率的なアプローチが期待できるとされています。
複数回の施術が必要なため費用がかさむ点や、軽度の痛みや赤みといった副作用などについて十分な理解が求められます。
AGAに関するよくある質問
ここでは、AGAに関して多くの方が疑問に思っていることについてお答えします。
❓AGAは完治するの?
AGAは、現在の医学では「完治」が難しい疾患とされています。AGAの根本的な原因である遺伝的要因やホルモン感受性を完全に取り除くことは困難であるためです。
一方、完治という言葉にこだわらず、「上手にコントロールしながら付き合っていく状態」と捉えることで、より前向きな姿勢で取り組めるようになるでしょう。
現代のAGA治療法は大きく進歩しており、多くの人が目に見える効果を得ています。
❓AGA治療のやめどきは?
AGAの治療は症状が安定した場合でも、やめるタイミングを慎重に判断する必要があります。AGAは進行性の脱毛症であり、治療を中止すると再び進行が始まるおそれがあるためです。
一般的な判断基準として、以下のような要素が考慮されます。
🔹効果が十分に現れている
🔹副作用が出ている
🔹加齢による自然な脱毛である
🔹経済的負担が大きい
これらの要素を総合的に評価し、個人の状況に応じて専門医と相談しながら決定することが重要です。
❓AGAが急激に進行することはある?
AGAは、原則として急激に進行することはありません。
日本皮膚科学会が策定する『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』には、AGAについて「思春期以降に発症して徐々に進行する脱毛症」との記載があります。一方で、発症すると徐々にではありますが確実に進行していくのが特徴です。
もし、突然抜け毛の量が増えたりまとまった量の髪の毛が抜け落ちたりする場合は、円形脱毛症やその他の脱毛症を発症しているおそれがあります。
これらの症状が見られた場合は、速やかに皮膚科専門医に相談することをおすすめします。
※参考:日本皮膚科学会『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』
まとめ
AGAは、「発症したら終わり」という疾患ではありません。
進行性で継続的な治療が必要な疾患ですが、現代の医学では効果的な治療法が確立されており、早期に適切な対策を講じることで症状の改善や進行の抑制が十分に期待できます。遺伝や男性ホルモン、生活習慣などの要因を理解し、外用薬や内服薬による治療、頭皮ケア、生活習慣の改善を組み合わせることが重要です。
特にミノキシジル外用薬は、日本皮膚科学会がガイドラインで『行うよう強く勧める』Aランクの推奨項目として位置付けており、選択しやすい方法の一つと言えるでしょう。
もしAGAが気になり始めたら、まずはご自身に合った対策を検討してみてはいかがでしょうか。