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【Kepani × MOONLOID】 普段着の一張羅とは

公開日:2026/04/03 更新日:2026/04/03
MOONLOIDの定番別注アイテムとして展開している、Kepaniのジップアップカーディガン。 日常の中で自然と手に取ってしまうその一着は、どのような背景から生まれたのか。 そして、なぜこの形であり、このバランスなのか。 本特集では、ブランドの背景と製品の成り立ちを紐解きながら、企画を手がけた代表・KAIへの対話を通して、その全体像に迫る。

Kepaniとは

ハワイ語で「日本人・日本」を意味する言葉、それがKepani。 このブランドが目指すのは、ヴィンテージの再現ではない。 糸の生成から編み立て、縫製に至るまで、主な工程を日本国内で行うという意思。 掲げるフィロソフィーは“Let it free”。 素肌を解き放つスウェット。 袖を通した瞬間に感じる軽さと、素肌に直接触れても違和感のない質感。 それは、日本の技術と積み重ねられてきた知恵によって支えられている。 ◆素材・編立・縫製―― 三つの産地が支える品質 Kepaniのスウェットは、大阪、和歌山、三重という三つの産地を経て完成する。 糸の誕生(大阪) 使用するのはラフィー糸。 紡績工程で生まれる落ち綿を再利用し、あえて均一ではないムラを残すことで、柔らかさと自然な表情を持たせている。 編立(和歌山) メリヤスの産地・和歌山ではシンカー編み機を使用。 吊り編みの風合いを踏まえながら、耐久性と安定性を両立させている。 低密度で編み上げることで、伸縮性と復元性を備える。 起毛(三重) 最終工程では起毛加工を施す。 繊維の間に空気を含ませることで、保温性と柔らかさを引き出している。 こうして生まれるのは、軽さと柔らかさ、そして日常に耐える強さを併せ持つスウェット。 では、このKepaniのスウェットを、僕たちはどのように解釈したのか。 そして、それをどう形にしたのか。 このジップアップカーディガンは、どのようにして生まれたのか。 その答えを、対話の中から辿っていく。
  • DIALOGUE―― 別注が生まれた背景

    別注ジップアップカーディガンについて、MOONLOID代表のKAIに話を聞いた。 聞き手はスタッフのSHUZO。 なぜKepaniだったのか。 なぜこの形に行き着いたのか。 その背景を、対話の中で辿っていく。 ※以下、S=SHUZO、K=KAI

    なぜ、Kepaniだったのか?

    S まずお聞きしたいのが、数あるスウェットブランドの中で、なぜKepaniをセレクトしたのかという点です。 K Kepaniを知ったのは合同展示会でした。 いろいろなブランドが並んでいる中で見つけたんですが、当時も今も、良いスウェットといえば吊り編み、というイメージが強くあると思います。 テンションをかけずにゆっくり編むことで空気を含んで、柔らかくて肌当たりのいい生地になる。 ただ、その分生産効率は悪いですし、毛玉が出やすいという側面もあります。 その中でKepaniは、あえてシンカー編みを選んでいました。 シンカー編みはもともと大量生産のための編み機で、短時間でたくさん作れる一方で、毛玉ができにくくて型崩れもしにくいという特徴があります。 ただ一般的なシンカー編みだと、吊り編みのようなふっくらとした風合いは出にくい。 Kepaniはそこを、旧式のシンカー編み機を使って時間をかけて編むことで、空気を含んだ柔らかさと耐久性の両立を実現している。 実際、その機械自体が日本に数台しかないので、同じことができるメーカーも多くはありません。 「良いスウェット=吊り編み」という考え方は確かにあると思うんですが、それだけではない選択肢があるということを提示しているのがKepaniだと思います。 その背景と、ここまでのクオリティでありながら日常的に着られる価格帯。 それが、自分たちの考える“普段着の一張羅”と重なったのが理由です。 S 確かに、良いスウェット=吊り編みというイメージは強いですよね。 その中でKepaniはシンカー編みを選んでいるというのが、最初に見たときから印象的でした。 実際に着てみると、柔らかさもありながら耐久性もしっかりしていて、吊り編みとはまた違う良さがあるというのは、すごく納得感があります。

    なぜ、この形に行き着いたのか?

    S 別注ジップアップカーディガンについて、なぜこの形になったのか教えてください。 K 最初に作っていただいたのは2014年です。 当時、フードのないジップアップのスウェットはほとんど見つけられませんでした。 少なくとも、自分たちの目の届く範囲にはなかったです。 スウェット自体は、本来通年で着られるアイテムだと思っています。 ただ実際には、パーカはフードが干渉してインナーとして使いづらいですし、クルーは着脱がしにくくて、アウターとしては成立しづらい。 どちらも良さはあるんですが、インナーにもアウターにもなる形にはなりきれていなかった。 それなら、その間を埋めるものを作ろうと考えたのがきっかけです。 ジップアップにすることで着脱しやすくなりますし、フードをなくすことでレイヤードにも干渉しない。 一年を通して使える形として、このバランスに行き着きました。 あと、今でいうPhantom Archiveという考え方にも繋がっているんですが、当時はそこまで意識していたわけではなくて、結果的にそうなった、という感覚に近いと思います。 このモデルでやっていることも、実際にあったものを再現しているというより、“もしこういうものがあったら”という発想から組み立てています。 例えば両面のVガゼットもそうです。 もともとクルーのスウェットがあって、それを一度切り開いて、ジップを付けてリメイクしたらこうなるんじゃないか、というイメージです。 さらにジッパーはコの字留めを使っています。 1940年代以前の仕様なので、もしその時代にこういうリメイクが行われていたら、こういうバランスになるんじゃないか、というところも含めて組み立てています。 それと、このモデルで初めて取り入れたのがシルバーとゴールドの組み合わせです。 レールはシルバー、スライダーはゴールド。 MOONLOIDのカラーとして直近の別注でも積極的に取り入れている配色ですが、その起点になったのがこの一着だったと思います。 S フードとクルー、それぞれの不便さを埋める形として考えられていたんですね。 そこにリメイクの発想や年代背景まで重なっていると考えると、単なる形ではなく、考え方そのものが反映されているのがよく分かります。
  • なぜ、このサイズバランスなのか?

    S サイズ感についても特徴的ですよね。ややタイトな印象があります。 K Kepaniはもともとタイトな設計で、リブも長めに作られています。 2014年から取り扱いを始めて、この12年の間にサイズのトレンドは大きく変わりました。 オーバーサイズが主流だった時期も長いと思います。 それでも、Kepani自体のサイジングは当初からほとんど変わっていません。 この形が、この生地を一番気持ちよく着られるバランスなんだと思います。 伸縮性があって、しっかり戻る。 そういう特性を考えると、体に沿うくらいのフィットがちょうどいい。 これはメーカーに直接聞いたわけではないんですが、この生地を長く作り続けているKepaniとしては、このバランスが一番合っていると考えているんじゃないかと思います。 自分たちもその考え方を前提にしているので、トレンドに合わせてサイズを変えるということはしていません。 どんなにオーバーサイズが主流の時期でも、このバランスはそのままにしています。 S 確かに最初は少しタイトに感じましたが、着ていくうちにそのフィット感が心地よくなっていく印象があります。 生地の特性とサイズが合っているからこその着心地なんですね。

    配色はどのように決まったのか?

    S 配色についてもお聞きしたいです。ヴィンテージスウェットなどでも見かける2トーンカラーが印象的です。 K ベースにはヴィンテージの2トーンの考え方があります。 ただ、それをそのまま再現しているわけではありません。 どちらかというと、この配色はガゼットやリブといったディテールをどう見せるか、というところから考えています。 ガゼットは、なくても成立するディテールですし、工程としても手間がかかる。 それでもあえて付けているのは、そこに価値があると考えているからです。 ただ、フードのないスウェットはどうしても見た目がのっぺりしがちです。 そこで、ガゼットや裾、袖のリブにコントラストをつけることで、一着の中に凹凸や表情を持たせています。 もちろん単色のスウェットも良いと思うんですが、年中着るものとして考えたときに、どうしても見え方が平坦になってしまうこともある。 その中で、色の切り替えによって自然に変化をつけている、というイメージです。 S 確かに着たときに、単色のスウェットとは少し違う見え方をするのは、その部分が効いているんですね。 生地の表情とガゼットの配色が重なることで、より立体的に見える理由がよく分かります。
  • この一着は、どう使われているのか?

    S このアイテムは、どのように使われることをイメージしていますか? K 基本的に、こう着てくださいというのは決めていません。 着方までこちらが決めてしまうのは、ある意味エゴだと思っているので。 自分たちがやるべきなのは、お客様がこれにお金を払ってでも手に取りたいと思えるものをきちんと用意することだと思っています。 その先の着方は、それぞれの方のスタイルに委ねたいです。 自分自身の使い方で言うと、かなりラフに着ています。 そもそもMOONLOIDとしては「普段着の一張羅」という考えがベースにあって、特別な日に着るものではなく、日常的に着るもの。 でも、自分の中ではちゃんと気に入っている。 そういう位置付けのアイテムを作りたいと思っています。 なので、こだわって作ってはいるんですが、着るときはこだわらずに着ています。 コットンなので洗濯も気にしなくていいですし、インナーにもアウターにもなるので、季節を問わず着ることができます。 例えばこれから暑い時期でも、冷房の効いた室内で羽織ることもありますし、汗をかいてもそのまま洗えるので、そこまで気を遣わずに使えるのも大きいと思います。 それと、このモデルはダブルジップなので、着方の幅は広いと思います。 下を少し開けてベルトを見せたり、上を開けてインナーを覗かせたり。 自分はタートルネックやシャツを合わせることも多いです。 パンツのシルエットによって開け方を変えるのも面白いですし、その人なりのバランスで着てもらえるのも、この一着の特徴だと思います。 S 着方を決めつけないという前提がありながら、実際には日常の中でかなり自然に使われているのが印象的ですね。 普段着としての気軽さと、自分の中で気に入っている一着という距離感が、このアイテムらしさだと感じました。

    最後に

    S 最後に、この特集を見てくださる方へメッセージをお願いします。 K 見てくださってありがとうございます。 こういう内容も含めて、楽しんでもらえたら嬉しいです。 正直、こういう場で何かメッセージを、となると難しいんですが、 やっぱりまずは、見ていただいていること自体がありがたいなと思っています。 YouTubeもそうなんですが、コメントは全部見ています。 反応をいただけるのは本当にありがたいです。 今後はライブ配信も予定していて、そのあたりもショップ店長のTAKECHIと話しながら進めています。 そういう場でも、こういった背景や考え方を直接お伝えできたらと思っています。 S こうして背景を知ることで、この一着の見え方も変わってきますね。 本日はありがとうございました。
    Kepaniというブランドの背景。 そして、そのスウェットをどう解釈し、どう形にするのか。 対話の中で見えてきたのは、日常の中でどう機能するかを起点に組み立てられているということ。 形やサイズ、配色も、すべてに理由がある。 その積み重ねが、特別ではないのに、自然と手に取ってしまう存在へと繋がっている。 普段着の一張羅。 気に入ってはいるけれど、気を遣わずに着ている。 そんな距離感で付き合える一着だ。