「世界の“ペット愛護先進国”から学ぶ」ドイツ・英国・北欧の文化と日本との違い
公開日:2025/05/16 更新日:2025/05/16ドイツや英国、北欧、オーストラリアは「ペット愛護先進国」と呼ばれています。では日本はどうでしょうか?本記事では、日本と海外のペットを取り巻く文化や制度の違い、その背景を探ります。
欧州やオーストラリアでは、ペットは文字通り家族の一員として扱われています。例えば世界的な調査では、95%の飼い主がペットを家族の一部と考えているとの結果が出ています。欧米ではペットに「ママ」「パパ」といった呼称で接し、人間の子どものように可愛がる光景も珍しくありません。実際オーストラリアの調査では、**飼い主の85%が「ペットが自分の生活に良い影響を与えている」**と回答し、多くがペットに話しかけたり自分を「ペットの親」と称したりするなど“ペット育児”とも言える行動を取っています。
こうした意識は数字にも表れています。ペットの飼育率(ペットを飼っている世帯の割合)を見ると、欧州連合(EU)全体で約半数、ドイツやイギリスでも約45%にのぼります。オーストラリアでは約7割の世帯が何らかのペットと暮らしていると推計されており、人口約2,600万人の国でペット数は2,870万匹にも達します。これは世界でもトップクラスのペット保有率で、**「ペット大国」**と称される所以です。欧州・豪州の多くの家庭にとって犬や猫は当たり前にいる存在であり、「ペット=家族」という価値観が社会に浸透しています。
一方、日本のペット飼育率は16%程度とされ、欧米に比べると低い水準です。後述するように近年日本でもペットを家族と考える人は増えていますが、欧州・豪州では既にペットとの生活が文化として根付いている点が大きな違いです。例えばイギリスでは、家庭で犬や猫と一緒にベッドで眠る人も珍しくなく、散歩や遊びの時間を日課にする飼い主が多数派です。また欧米では**「ペットは留守番させず一緒に出かけるもの」**という考えも一般的で、愛犬をキャンプや旅行に同伴したり、週末にはドッグランで交流したりと、生活の中にペットとの時間が自然に組み込まれています。ペットを取り巻く環境が整っているからこそ、こうした行動傾向が当たり前になっているのです。
ペット愛護先進国と呼ばれる国々では、法律や制度面でもペットの福祉が手厚く守られています。ここではドイツや英国、フィンランド、オーストラリアと日本の違いをいくつか見てみましょう。
▼識別と登録(マイクロチップ義務化): 欧州や豪州の多くの国では犬や猫へのマイクロチップ装着と登録が法的に義務付けられています。例えばイギリスでは2016年から全ての犬にマイクロチップ装着が義務となり、2024年からは猫にも拡大される予定です。オーストラリアでも全ての州で犬猫のマイクロチップ装着が法律で義務化されており(※北部準州を除く)、違反者には罰金が科せられます。フィンランドなど北欧諸国も同様に登録制が徹底されており、犬や猫を飼う際は身元登録が当たり前です。その結果、フィンランドではペットショップで子犬・子猫を販売すること自体が禁止されており、ペットの出所管理が厳格に行われています。日本でも2022年6月から改正動物愛護管理法が施行され、ブリーダーやペットショップが販売する犬猫へのマイクロチップ装着・環境省への情報登録が義務化されました。ただし一般の飼い主が既に飼っているペットは努力義務(任意)に留まっており、海外のような包括的な義務化には至っていません。
▼繁殖業・販売に関する規制: 先進国では悪質な繁殖業者(パピーミル)の排除や生体販売の制限に積極的です。イギリスの例では2019年に「ルーシー法」と呼ばれる法律が成立し、2020年4月からペットショップや第三者業者が生後6か月未満の子犬・子猫を販売することを禁止しました。これにより、新たに犬猫を迎えたい人は認可ブリーダーか保護施設からしか入手できない仕組みになっています。フィンランドやドイツ、イタリアなどでもペットショップで犬猫を売る商習慣がなく、原則としてブリーダー直接販売か里親による譲渡が一般的です。一方、日本では現在も街のペットショップで子犬や子猫が販売されており、犬猫の流通経路に関しては欧州ほど厳しい規制はありません。近年ようやく業者の繁殖上限頭数の制限やオークション市場の実態調査などが始まりましたが、悪質業者の摘発件数は氷山の一角とも言われ、取り組みは途上です。
▼動物虐待防止と罰則: ペット愛護先進国では法律で動物虐待を厳しく罰することで未然防止を図っています。イギリスでは2006年動物福祉法で動物への積極的な世話の義務(適切な環境・食事・健康管理等)を定め、虐待やネグレクトが発覚すれば最長5年の禁錮刑が科せられます。ドイツでも動物保護法(TierSchG)により動物虐待は犯罪と位置付けられ、違反者には高額な罰金や懲役刑が課されます。さらにドイツは憲法に「国家は動物の保護に責任を負う」と明記するほど徹底しています。またドイツでは2021年に規則が改正され、「犬を毎日最低2回・合計1時間以上散歩させる」ことが義務化されました。これは「散歩に行かない=虐待」とみなす考えに基づくもので、犬を長時間一人ぼっちで留守番させることも禁止されています。北欧のフィンランドも動物福祉法の整備が進んでおり、違反時の罰則は厳罰化、行政による指導・摘発(アニマルポリス制度)も充実しています。日本の場合、動物愛護管理法に基づき虐待や遺棄は犯罪ですが、2020年改正でようやく虐待致死に対する懲役上限が5年となったものの(従来は2年)、欧米に比べ量刑が軽いとの指摘があります。実際、行政の権限やリソース不足から悪質な飼育崩壊や虐待への対応が後手に回るケースも報道されています。
▼殺処分ゼロ施策: 欧州の先進地域では保健所等でのペットの殺処分を極力行わない方針が一般的です。ドイツやイタリアでは法律上ペットの殺処分が原則禁止されており、自治体のシェルターに保護された犬猫は新しい飼い主が見つかるまで終生飼養されます。ドイツの動物保護施設「ティアハイム」は民間と行政が協力して運営され、犬猫の譲渡率90%以上という世界最高水準の実績を誇ります。これに対し、日本では近年殺処分数は減少傾向にあるものの、2022年度でも犬2,118頭・猫6,899頭が殺処分されています。数年前まで毎年数万頭が処分されていた状況からは改善したとはいえ、「命を終わらせる選択肢」が残っている現状は欧州の先進国と大きく異なります。
以上のように、法律や制度面では日本と欧州・豪州の間にまだ大きな隔たりがあります。法の整備と運用、そして国民の意識が三位一体となって、ペット先進国では動物たちの権利と安全が守られているのです。
ペット愛護先進国では、ペットと共に暮らすための社会インフラが充実しています。日常のあらゆる場面でペット同伴がしやすく、公共の施設やサービスにもペットへの配慮が行き届いています。その具体例を見てみましょう。
▼公共交通機関の利用: 欧州では電車やバスなど公共交通にペットを同伴できる国が多くあります。例えばドイツやフランスでは、大型犬でもリードと口輪着用など条件を守れば列車に同乗可能です。イギリスでも地下鉄や国鉄に追加料金なしで犬を乗せられます(※ラッシュ時を避けるなどの配慮は必要)。対して日本では、基本的に小型のペットをキャリーバッグに入れれば乗車可とされていますが、大型犬を連れて新幹線やバスに乗ることはまずできません。ペット先進国では「ペットが公共の場にいること」が日常風景であり、ペットアレルギーや衛生面への配慮ルールを設けつつ、公共交通での移動のハードルを下げています。
▼宿泊施設・外食: 欧州やオーストラリアにはペット同伴OKのホテルやレストランが数多く存在します。とりわけドイツや北欧では「ペット不可の場合のみ明記する」という表現があるほど、ペット連れが当たり前の施設もあります。イタリアのカフェでは店内で犬がおとなしく足元で寝そべっている姿や、イギリスのパブで飼い主と犬が一緒にくつろぐ光景も普通に見られます。宿泊も、高級ホテルからB&B(民宿)まで犬歓迎(Dog Friendly)を掲げたところが多く、部屋にケージやペットベッドを用意してくれるサービスも充実しています。一方、日本ではペット可の宿泊施設は増えているものの全体から見れば少数派で、東京など大都市でも犬同伴可能なホテルの数は限られるのが現状です。また一般の飲食店は衛生上ペット不可が原則で、愛犬と食事を楽しめるドッグカフェはまだ専門店に限られます。こうした受け入れ先の少なさが、日本では「ペットと一緒に旅行・外食しづらい」と感じる一因でしょう。
▼住環境・屋外施設: ペットと暮らすうえで重要な住まい環境や近隣施設にも、国によって差があります。欧米では都市公園にドッグラン(犬専用エリア)が整備されていたり、ノーリードで遊ばせてよい時間帯が設けられていたりします。特にオーストラリアや北欧は自然公園も多く、広大なドッグパークや散歩道が各地にあります。さらに、フィンランドでは賃貸住宅でペット飼育を一方的に禁止することが難しく、ペット可物件が比較的見つけやすいと言われます(契約時にペットの有無を告知する義務も明確です)。これに対し日本は、集合住宅で「ペット不可」の物件が依然多く、飼い主が引っ越しで困る原因にもなっています。また都市部の公園はリード必須で自由に走れる場所が少なく、ドッグランは数えるほどしかありません。犬と暮らす都市環境の整備度という点で、日本は他国より遅れています。
こうしたインフラの差は、国の姿勢や文化の違いを如実に反映しています。実際、世界50都市の**「犬にとって幸せに暮らせる都市ランキング」では、東京は49位(ワースト2位)という不名誉な結果が報告されています。評価項目には獣医師の数、ドッグランや犬同伴可能な施設の数などが含まれており、東京は犬同伴可能なホテルや店舗の少なさ**が際立ったと指摘されています。逆に上位にはチューリッヒ、シアトルなどペットフレンドリーな環境が整った都市が並びました。
ちなみに、ペット先進国のペット関連製品にはその国の暮らしやすさが反映されています。例えば散歩インフラが整うドイツでは、ドイツ製伸縮リード(巻き取り式リード)が広く愛用されています。伸縮リードは犬に適度な自由を与えつつ飼い主が制御でき、安全に散歩を楽しむためのグッズです。その代表格であるドイツ生まれの製品は耐久性・操作性に優れ、世界中で支持されています。また、健康志向の高いオーストラリアではオーストラリア製サプリメントが人気です。グルコサミンやオメガ3脂肪酸などを含むサプリはシニア犬猫の関節ケアや毛艶の維持に役立ち、獣医師推奨の品質基準をクリアした信頼できる製品が多いです。寒冷な北欧フィンランドでは、防寒対策も万全です。フィンランド製レインコートや機能ウェアは防水・防寒に優れ、雪や雨の日でも犬が快適に外出できる工夫が凝らされています。このように、各国の生活環境やペット観がプロダクトにも表れているのです。
海外のペット用品には、その国の文化や価値観が宿っていると言われます。ただ機能的なだけでなく、「なぜその製品が生まれたのか」を知ると背景にある思想が見えてきます。ペット愛護先進国の製品をいくつか例に、その特徴を見てみましょう。
▼イギリス製シャンプー・肉球ケア用品: 長年ペット愛好家が多いイギリスでは、ペットのグルーミング(毛づくろい)文化が発達しています。そのためシャンプーや肉球クリームなどのケア用品にもこだわりが光ります。英国製のペットシャンプーは低刺激で天然成分由来のものが多く、被毛や皮膚を人間の赤ちゃん同様にいたわる発想で作られています。香りも強すぎず、動物が嫌がらないよう配慮された商品が主流です。また肉球ケアについても、英国では散歩後にクリームで保湿する習慣が定着しており、蜜蝋(みつろう)やアロエ配合の肉球バームなど高品質なケア用品が人気です。どれも「ペットにできるだけ負担をかけず快適に」という理念に基づいており、動物愛護の精神が製品開発に活かされているといえます。
▼イタリア製ハーネス・首輪: ファッションと職人技の国イタリアは、ペット用品でもその魅力を発揮しています。ハーネス(胴輪)や首輪などの製品はイタリア製が世界的に高い評価を受けています。柔らかい生地を使い職人がハンドメイドで仕上げる首輪は、ペットの体に馴染んで負担が少なく、それでいて耐久性も抜群です。デザインも洗練され、高級バッグさながらのカラーバリエーションがあるものなど様々です。イタリアでは犬と一緒に街を散歩するのも社交の一部であり、「愛犬にも上質なものを身につけさせたい」というオーナーが多くいます。そのため機能性と美しさを兼ね備えたハーネスやリードが多数生み出されてきました。まさに「ペットも家族だからこそ良いものを」という文化が製品に宿った例と言えるでしょう。
以上のように、海外製品には各国の思想や生活スタイルが反映されています。日本の製品ももちろん高品質ですが、海外には**「文化の数だけユニークなペット用品がある」**のです。製品を手に取るとき、産地の国がどんなペット文化を持っているかに思いを巡らせると、新たな発見があるかもしれません。
ここまで海外の状況を見てきましたが、日本も少しずつペットとの暮らしに前向きな変化が生まれています。かつては「外飼いの番犬」が一般的だった日本も、今では犬猫の完全室内飼育が主流となり、多くの家庭でペットはかけがえのない存在になりました。実際、2023年の意識調査では日本人飼い主の約72.9%が「ペットを人間の家族と同等の存在だ」と考えているという結果が出ています。半数近くが「人と同じように扱うことを意識している」という回答もあり、高齢層から若者までペットへの愛情と責任感は確実に高まっています。
法律面でも前述のように改正動物愛護管理法によってマイクロチップ義務化や罰則強化が行われましたし、自治体によっては殺処分ゼロを目標に掲げて成果を上げるところも出てきました。ペット産業も変化しつつあり、かつて子犬子猫の展示販売が主流だった大型ペットショップチェーンが生体販売縮小に踏み切る動きもあります。またSNSやテレビを通じて海外のペット事情が紹介され、「欧米では犬とこんなふうに暮らしているんだ」「北欧のペット事情を見習いたい」と刺激を受ける飼い主も増えてきました。
こうした中で、海外製のペット用品を取り入れる意義も再認識されています。単に舶来志向というのではなく、ペット愛護先進国の知恵やノウハウが詰まった製品を使うことで、日本のペットとの暮らしをより豊かにできるからです。例えば、先進国の高品質なフードやケア用品はペットの健康寿命を延ばす助けになりますし、機能的なグッズは飼い主の負担軽減やマナー向上にも寄与します。ドイツの伸縮リード一つとっても、使ってみると「散歩中の犬の動きを尊重する設計」に感心するかもしれません。英国のシャンプーを試せば「香料控えめでペット目線の作り」に気づくでしょう。製品を通じて海外のペット文化に触れることは、日本の飼い主の視野を広げるきっかけにもなります。
日本は長らく「ペット後進国」と言われてきましたが、近年の意識変革と努力により少しずつ状況は改善しています。ただ、欧州やオーストラリアと比べれば制度面・文化面で課題が残るのも事実です。だからこそ、海外の先進事例から学び、製品選びやライフスタイルに活かすことが有益なのです。ペット先進国の豊かな発想を日本流に消化し、ペットも人も快適に暮らせる社会を目指していきたいものです。
以上、日本と欧州・豪州のペット事情を比較してきました。ドイツや英国、フィンランド、オーストラリアといった**「ペット愛護先進国」では、ペットを家族とする文化が社会全体に根付き、法律やインフラまで整備されていることが分かりました。そうした国々で生まれるペット用品には、ペット第一の思想や高い品質が反映されており、使うことでその背景にある文化を感じ取ることができます。日本も徐々にペットに優しい社会へと歩みを進めていますが、海外にはまだまだ学べる点が多くあります。ぜひ一度、海外製のリードやフード、ケア用品など手に取ってみて、その違いとこだわり**を感じてみてください。それは単に便利なグッズを得るだけでなく、ペット先進国の智慧を日々の暮らしに取り入れることにつながります。ペットと人間が共に幸せに暮らせる未来のために、国内外の良いものを柔軟に採り入れながら、日本ならではのペット文化を育んでいきましょう。