そうして始まった沢庵づくりは、
決して順風満帆ではありませんでした。
最初にぶつかったのは、塩の分量でした。
多すぎれば、辛いだけで酸味が出ない。
少なすぎれば、今度は酸っぱくなりすぎる。
しかも、その答えがわかるのは半年後。
仕込んだその日に正解は見えません。
失敗か、成功か。
結果が出るまで、ただ待つしかない時間。
それでも、やめませんでした。
やがて、大根の扱いでも迷いが生まれます。
創業当初から続けてきた天日干し。
けれど、もっと効率のいい方法があるのではないか、と。
塩漬けで水分を抜く近代的な方法を試しました。
けれど半年後、出来上がった沢庵は、
驚くほど味がのっていなかったのです。
水分と一緒に、
大根の甘みや旨みまで抜けてしまっていた。
天日干しは、空気の力でゆっくりと乾かす。
だからこそ、甘みと旨みが残る。
「手間には、理由がある。」
そのことを、身をもって知りました。
さらに、原料でも迷いが生まれました。
この先もずっと、国産大根で続けられるのか。
供給が不安になる日が来るのではないか。
そんな恐れから、海外産の大根も試しました。
価格は魅力的でした。
けれど、何度挑戦しても、美味しい沢庵にはならない。
後にわかったのは、糖分の違いでした。
日本の大根は、糖分が豊か。
海外の大根は、糖分が少ない。
糖分は、発酵の命です。
それが足りなければ、うまく発酵しない。
遠回りをして、
ようやく確信したのです。
本当に美味しい沢庵をつくるには、
時間も、手間も、国産の大根も、
どれも欠かすことができないと。