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樽の味 これまで

公開日:2026/02/23
そうして始まった沢庵づくりは、 決して順風満帆ではありませんでした。 最初にぶつかったのは、塩の分量でした。 多すぎれば、辛いだけで酸味が出ない。 少なすぎれば、今度は酸っぱくなりすぎる。 しかも、その答えがわかるのは半年後。 仕込んだその日に正解は見えません。 失敗か、成功か。 結果が出るまで、ただ待つしかない時間。 それでも、やめませんでした。
やがて、大根の扱いでも迷いが生まれます。 創業当初から続けてきた天日干し。 けれど、もっと効率のいい方法があるのではないか、と。 塩漬けで水分を抜く近代的な方法を試しました。 けれど半年後、出来上がった沢庵は、 驚くほど味がのっていなかったのです。 水分と一緒に、 大根の甘みや旨みまで抜けてしまっていた。 天日干しは、空気の力でゆっくりと乾かす。 だからこそ、甘みと旨みが残る。 「手間には、理由がある。」 そのことを、身をもって知りました。
さらに、原料でも迷いが生まれました。 この先もずっと、国産大根で続けられるのか。 供給が不安になる日が来るのではないか。 そんな恐れから、海外産の大根も試しました。 価格は魅力的でした。 けれど、何度挑戦しても、美味しい沢庵にはならない。 後にわかったのは、糖分の違いでした。 日本の大根は、糖分が豊か。 海外の大根は、糖分が少ない。 糖分は、発酵の命です。 それが足りなければ、うまく発酵しない。
遠回りをして、 ようやく確信したのです。 本当に美味しい沢庵をつくるには、 時間も、手間も、国産の大根も、 どれも欠かすことができないと。