毎日のオーラルケアに欠かせない歯磨き粉。スーパーやドラッグストアの棚には多くの種類が並び、「ホワイトニング」「知覚過敏ケア」「歯周病予防」などさまざまな機能をうたった商品があります。実はこれらの効果の違いは、歯磨き粉に配合されている成分によって決まります。
しかし、パッケージの裏面に小さな文字で書かれている成分表を見ても、専門的な名前ばかりで「結局どういう意味なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、歯磨き粉に含まれる代表的な成分とその役割を整理し、成分表示を読み解けるようになることを目指します。
1. 歯磨き粉の基本構成
歯磨き粉は大きく以下のような成分群から構成されています。
1、基剤(ベース):水や湿潤剤。歯磨き粉の形状を保つ。
2、清掃剤(研磨剤):歯の表面の汚れやプラークを除去する。
3、薬用成分(有効成分):むし歯予防、歯周病予防、知覚過敏抑制などを担う。
4、発泡剤:泡立ちを良くし、口腔内に広がりやすくする。
5、粘結剤・安定剤:成分を均一に保ち、使用感を良くする。
6、香味剤:ミントなどの香りや味を付与し、爽快感を与える。
7、保存料・防腐剤:長期保存に耐えるようにする。
つまり「汚れを落とすための清掃成分」と「歯や歯ぐきを守る薬用成分」、そして「使用感や品質を整える補助成分」が組み合わさっているのです。
2. むし歯予防成分
歯磨き粉といえば真っ先に思い浮かぶのが「フッ素」です。
<フッ素(フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムなど)>
[働き]
・歯の再石灰化を促進し、初期むし歯を修復する。
・エナメル質を酸に強い構造に変える。
・むし歯菌が酸を作り出すのを抑える。
[ポイント]
日本では薬用歯磨き粉に配合されるフッ素濃度は1450ppm以下に規制されています。毎日の使用でむし歯予防効果が期待できます。
<その他のむし歯予防成分>
[キシリトール]
甘味料ですが、むし歯菌が利用できないため酸を作らせない。唾液分泌を促す作用もある。
3. 歯周病予防成分
歯ぐきの腫れや出血を防ぐには、歯周病菌の増殖を抑えたり、炎症を軽減する成分が役立ちます。
・トラネキサム酸:歯ぐきの出血を抑える。抗炎症作用を持つ。
・塩化セチルピリジニウム(CPC):殺菌作用。プラークの付着を抑える。
・イソプロピルメチルフェノール(IPMP):歯周ポケットの奥に浸透し、細菌を殺菌。
・β-グリチルレチン酸:炎症を鎮める。
・クロルヘキシジン(海外ではよく使われるが、日本の歯磨き粉にはほぼ配合されない)。
これらは「歯ぐきケア」「歯周病予防」と書かれた歯磨き粉に配合されています。
4. 知覚過敏対策成分
冷たいものがしみる知覚過敏は、象牙質の神経に刺激が伝わりやすくなっている状態です。それを防ぐ成分として次のようなものがあります。
・硝酸カリウム:神経の過敏反応を鈍らせる。
・乳酸アルミニウム:歯の細かい管を封鎖して刺激の伝達を防ぐ。
・フッ素にも象牙質を再石灰化させて知覚過敏を抑える働きがある。
5. ホワイトニング成分
歯の表面の着色(ステイン)を除去・予防する目的で使われる成分です。
・研磨剤(清掃剤):シリカ(無水ケイ酸)、リン酸水素カルシウムなど。
汚れを物理的にこすり落とす。
・ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸塩:ステインの付着を防ぐ。
・ヒドロキシアパタイト:エナメル質の表面を補修し、なめらかにして汚れをつきにくくする。
ただし、市販の歯磨き粉のホワイトニング効果は「歯を白く漂白する」のではなく「表面の汚れを落とし、着色を防ぐ」程度と理解しておくと良いでしょう。
6. 口臭予防成分
口臭の多くは口腔内の細菌が出す揮発性硫黄化合物によるものです。
・塩化亜鉛:口臭の原因物質を中和する。
・CPC、IPMPなどの殺菌剤:菌の繁殖を抑える。
・メントールなどの香味剤:爽快感を与えるが、一時的。
7. 発泡剤・香味剤・基剤の意味
効果効能に直接関わらないものの、使用感や保存性を高めるために大切な成分です。
・発泡剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)
泡立ちを良くする。汚れを浮かせて拡散させる働きもある。ただし刺激が強いと感じる人もいる。
・湿潤剤(グリセリン、ソルビトールなど)
歯磨き粉が乾燥しないよう保湿する。
・粘結剤(カルボキシメチルセルロースなど)
ペーストの粘度を保ち、成分が均一に混ざるようにする。
・香味剤(メントール、ミントオイルなど)
爽快感を与え、ブラッシングを習慣化しやすくする。
8. 成分表示の見方
薬用歯磨き粉は「医薬部外品」に分類され、パッケージ裏に有効成分とその他の成分が分けて表示されます。
・「有効成分」:むし歯予防や歯周病予防に科学的に効果が認められたもの。
・「その他の成分」:製剤の安定化や使いやすさのための補助成分。
例えば「薬用フッ素配合」と書かれた歯磨き粉では、成分表示に「フッ化ナトリウム(有効成分)」と明記されています。
9. 成分を選ぶときのポイント
歯磨き粉は「好みの味や使用感」で選ぶのも大切ですが、目的に応じて成分を見るとより効果的にケアできます。
・むし歯予防 → フッ素配合
・歯周病予防 → CPC、IPMP、トラネキサム酸
・知覚過敏 → 硝酸カリウム、乳酸アルミニウム
・ホワイトニング → 研磨剤+ポリリン酸塩など
・口臭ケア → 塩化亜鉛、殺菌剤
<まとめ>
歯磨き粉に含まれる成分は、単なる「泡立ち」や「香り」だけでなく、むし歯・歯周病・知覚過敏・口臭などさまざまな口腔の悩みに対応しています。裏面の成分表示を見て、それぞれの成分がどのような役割を果たしているのか理解できれば、自分や家族に合った歯磨き粉を選びやすくなります。
毎日のブラッシングはオーラルケアの基本です。成分の意味を知り、目的に合った歯磨き粉を正しく使うことで、歯と歯ぐきの健康を長く守っていきましょう。