~健康に良さそうなのに?知られざる落とし穴~
暑い季節や運動後の水分補給として人気の「スポーツドリンク」。脱水症状を防ぎ、体に必要な電解質を補ってくれる優れた飲料として、日常的に取り入れている方も多いでしょう。特に部活動に励む学生やランナー、炎天下での作業をする方にとっては、身近で頼れる存在です。
しかし――そんな健康イメージの強いスポーツドリンクが、実は“虫歯リスク”を高める要因になるということ、ご存じでしょうか?
この記事では、歯科医監修のもと、スポーツドリンクと虫歯の意外な関係性をわかりやすく解説します。
スポーツドリンクは
「健康飲料」ではなく「高糖質飲料」?
スポーツドリンクは、一見ヘルシーに思えるパッケージデザインや「電解質補給」などの謳い文句から、「体に良い飲み物」と誤解されがちです。ですが、実際の成分表示を見てみると、糖分の含有量に驚かされることも多いのです。
たとえば、一般的な500mlのスポーツドリンクには、約25〜30g(角砂糖6〜7個分)もの糖分が含まれています。これは清涼飲料水と同程度、もしくはそれ以上の糖分量です。
さらに注意したいのが、**pHの低さ(酸性度)**です。スポーツドリンクの多くはpH3〜4と非常に酸性寄りであり、長時間口内にとどまることで、歯のエナメル質を溶かしてしまう「酸蝕歯(さんしょくし)」のリスクも高まります。
虫歯ができるメカニズムと
スポーツドリンクの影響
虫歯(う蝕)は、口の中に存在する細菌が糖分を分解し、酸を出すことで歯を溶かす現象です。虫歯の三大要因は以下の通り:
1、糖分(栄養源)
2、虫歯菌(ミュータンス菌など)
3、時間(糖が口内にとどまる時間)
ここでスポーツドリンクが関与するのは、「糖分」+「酸」+「口に残る時間」の3点すべてです。運動中や勉強中など、何度も少しずつ飲む“ちびだら飲み”の習慣は、常に糖と酸が口の中にある状態を作り出します。これは虫歯リスクを非常に高める行動パターンです。
また、運動中は唾液の分泌が減りがちです。唾液には、酸を中和し、歯の再石灰化を促す重要な役割がありますが、脱水傾向にあるとその作用が弱まり、さらに虫歯が進行しやすくなります。
特に注意したいのは「成長期の子ども」
小中学生の部活動やスポーツ教室などで、頻繁にスポーツドリンクを飲む子どもたちは、特に虫歯リスクが高まります。乳歯や生えたばかりの永久歯は、大人の歯よりも柔らかく、酸に弱いためです。
また、「水よりスポドリのほうがおいしいから」と、水分補給がスポーツドリンクに偏ると、日常的に高糖質・高酸性の状態が続くことになります。親御さんは、単なる水分補給と虫歯の関係に注意し、正しい知識をもって対策を立てることが重要です。
おススメ品
歯科医がすすめる!
虫歯リスクを抑えるスポドリの飲み方
では、スポーツドリンクは完全に避けるべきなのでしょうか?
答えは「NO」です。必要な場面で正しく使えば、熱中症対策や脱水防止に非常に有効です。
歯の健康を守りながら、うまく活用するために、以下のポイントを押さえましょう:
1. 飲み方に注意する
・ちびちび飲みを避ける:短時間で飲み切り、口に糖が長く残らないようにする
・ストローで飲む:歯に直接触れにくくなり、酸と糖の接触時間を減らせます
2. 飲んだ後のケアを心がける
・水でうがいをする:糖や酸を洗い流すだけでもリスクは大幅に低下
・可能なら歯みがき:特に就寝前は必ずケアを
3. 代替飲料を選ぶ
・水やお茶(無糖)を基本に:日常的な水分補給は、なるべく糖分のない飲料を選びましょう
・イオン補給が必要な場合でも「低糖・無糖タイプ」のスポドリを選ぶのも一案です
専門家のコメント
「スポーツドリンクは、“必要なときに、適切に飲む”ことが大切です。毎日のようにちびちび飲むのは、歯科的には非常にリスクの高い行動です。特に子どもの歯は酸に弱いので、保護者の方がしっかり管理してあげましょう」
まとめ
スポーツドリンクは体に良いとされる反面、虫歯のリスクを大きく高める要素を含んでいます。「ちょっとした水分補給」のつもりが、虫歯の原因になるかもしれない――。
そんな“意外な関係”を知ることで、正しく対処できるようになります。
虫歯予防の第一歩は、「知識を持つこと」。
スポーツドリンクと上手に付き合って、体も歯も健やかに保ちましょう。