産褥期(さんじょくき)とは、妊娠や分娩で変化した子宮や全身の状態が、妊娠前の状態に回復していく時期のことを言います。妊娠期が9ヶ月かけてゆっくり変化したのに対し、産褥期は6〜8週間と言う短期間に変化するため、ジェットコースターに乗っているようだと表現されることがあります。
産後にみられる症状(悪露、会陰部の痛み、後陣痛、多量の汗、尿量の増加、腰痛、浮腫)は生理的なものですが、当事者にとっては不快であることは間違いありません。生理的な症状であっても、生活習慣によっては悪化し日常生活に影響しますので、放置しないでセルフケアに努めましょう。ここでは、妊娠期の浮腫、産後の浮腫、産後の浮腫対策について説明させていただきます。
6割程度の女性が、妊娠期に浮腫を経験しています。高血圧や蛋白尿の症状が見られない浮腫は生理的浮腫と言い、病的な浮腫とは区別されます。生理的浮腫が起こる原因は、ホルモンバランスの変化、大きくなった子宮による下半身の血管の圧迫、血液量の増加(妊娠末期には非妊時の1.5倍近く増加)などです。生理的な浮腫は、妊婦と胎児に悪い影響を与えることはなく、心配はありません。しかし不快であることは間違いありませんので、対策が必要です。
産後の浮腫は、妊娠中から引き続き見られるもの、産後新たに出現するものがあり、5割から8割の女性に見られます。通常、妊娠中に増加した血液は、産後の尿量の増加や発汗などにより減少し、産後3週間ころまでに妊娠前の状態に戻ります。浮腫のピークは、産後2・3日から1週間くらいで、産後1ヶ月ころには改善します。
産後の入院中に浮腫が見られたら、医師や助産師に相談し、セルフケアを身に着けておきましょう。また症状が悪化する場合は、2週間健診や1ヶ月健診で相談しましょう。基本的なセルフケアについて、以下に説明をさせていただきます。
1.クッションなどを使って、足を高くして休みましょう
産後1ヶ月は、赤ちゃんと自分のことだけを行い、寝たり起きたりの生活をしましょう。休む時は、足の下にクッションや枕を入れ、足を高くすると血流が良くなり、浮腫の改善につながります。
2.産褥体操で、足首を回したり、かかとの上げ下げをしたりして血行を促しましょう
産褥体操は、産後の回復を助けるとともに体調を整えます。運動ができない時期でも無理なく行え、浮腫の改善に役立ちます。育児中や家事をしているときでも、足指や足首を動かすなど「ながら運動」をしましょう。セルフケアでなかなか改善できない時は、理学療法士による産後リハビリを利用するのも良いでしょう。
3.足浴で足を温め、マッサージをし、血行を良くしましょう
温めることで足の血流を良くなり、浮腫やだるさが軽減します。お風呂に入れない時期は、シャワーのときに15分程度、足湯をしてみませんか。お湯にアロマオイルを数滴入れ、リラックスするのも良いでしょう。足湯で温めた後に、マッサージすることで浮腫を軽減し、疲労を取ることもできます。ただし、静脈瘤や、足に強い腫れや痛みがある場合には、マッサージで症状が悪化したり、血栓症を起こしたりすることがあります。マッサージについては自己判断せず、医師に相談しましょう。
4.こまめに姿勢を変えましょう
同じ姿勢を続けると血行が悪くなり、浮腫がおこりやすくなります。授乳や育児では、同じ姿勢を続けることが多いため、意識して姿勢を変えましょう。育児の前後に、足首回し、かかとの上げ下ろしなどのストレッチするのも浮腫の軽減に効果的です。
5.妊娠中に引き続き、減塩を続けましょう
浮腫は塩分の取りすぎが原因のことがあります。成人女性の食塩摂取の目標量は、1日当たり6.5g未満ですが、日本人女性は1日9gとっていると報告されています。将来の高血圧のリスクを下げる良い機会です。産後も自分や家族のために、減塩を続けましょう。
6.ストレスや疲労をためないようにしましょう
ストレスがたまると自律神経が乱れ、血流が滞り、浮腫が起こりやすくなります。育児中だから仕方がないと諦めず、周囲の助けを得て休息や睡眠をとりましょう。
7.着圧ソックスの使用を相談してみましょう
浮腫が気になるとき、着圧ソックスもひとつの選択肢になります。妊娠中から使用しているものがあれば、それを使っても良いでしょう。産後に初めて着用するときは、サイズや素材、着圧値について、医師や助産師に相談してみましょう。最初は、ゆるめの着圧値(~20hPa)を使用しましょう。
産後の浮腫は入院中から1週間ころに現れます。多くは、生理的なもので産後2~4週間で改善します。過度に心配せず、適切なセルフケアを続けましょう。