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産後のタブーは守った方がよいのか?

公開日:2025/10/16 更新日:2025/10/18

産後のタブーは守った方がよいのか?

産後のタブー(やってはいけないこと)は、母親の身体回復を助け、赤ちゃんへの悪影響を防ぎたいという願いのなかで、長年の智恵から生まれてきたものです。そのため国や地域を超えて共通していることがある一方で、全く異なるも場合もあります。 例えば、日本や韓国、中国、台湾などアジア諸国では産後1ヶ月は家で養生し、外出を控えるという習慣があります。しかし欧米諸国では、産後早い時期からの外出が推奨されており、赤ちゃん連れでも外出しやすい社会環境が整っています。産後の食事については、アジア圏では産後の回復や母乳育児に配慮したタブーが存在します。しかし欧米ではそのような食事制限はないようです。 近年、日本でも外国人のママが増えてきています。出産施設などでは産後の習俗(ならわし)ついて、時々、当事者や医療者との間にすれ違いが生じることがあります。日本人が海外で出産する場合も同様のことが問題になります。 そこで、産後のタブーについて考えてみたいと思います。

1.産後の過ごし方、外出はいつから?

欧米では、自然分娩の場合、出産から1日・2日で退院します。お隣の韓国では2泊3日、中国では3日間の入院です。一方日本では、5日程度で退院します。日本の産後の入院期間は他国に比べ、長いように感じますが、昔の日本と比べると2日ほど短くなっています。日本でも1日~3日で退院できないわけはないと思いますが、海外での退院後の母親の出血や発熱、新生児の黄疸などによる再入院率を考えると、5日から7日が丁度良いように思います。また、日本では海外に見られる助産師や保健師による長期的な家庭訪問サービスがなく、韓国の「産後調理院」のように、早期退院した場合の受け皿となるサービスがほとんどありません。個人的な意見ですが、産後のママや家庭状況を見ている立場からすると、産後入院期間は今のままかもう少し長くし、ママの身体のリハビリを兼ねた育児支援サービスが充実することを願っています。 さて産後の望ましい過ごし方ですが、入院中は赤ちゃんと自分のだけのことを行い、退院後は軽い家事から始め、疲れたらいつでも休めるようにしておきます。2週目に入ると家事を少しずつ増やし、清潔なお湯であれば入浴をしても差支えありません。1ヶ月健診ころからちょっとした外出が可能になります。産後8週ころを目安に、徐々に妊娠前の生活に戻していきます。日常生活行動の拡大は、妊娠前の長期入院の有無、分娩の状況、体調・体力、育児による疲労、手助けの有無などの個別性を考慮しながら決めていくのが良いでしょう。産後3ヶ月ころに妊娠前の状態に戻る人もいれば、回復に6ヶ月位かかる人もいます。

2.重いものは持たない

重いものを持ったり、力仕事をしたりしてはいけない。 妊娠や出産の影響で骨盤や骨盤底筋群が緩んでいます。重いものを持ったり、力仕事をすると腰痛が悪化したり、腹圧がかかったことで尿もれを起こすことがあります。赤ちゃんを抱く以外は、重たいものを持たないようにしましょう。尿もれの予防では、骨盤底筋が回復するまでは良い姿勢を保ち、お腹周りを締めないことが重要です。

3.目を使ってはいけない

産後は本や雑誌、テレビを見てはいけない、目を使わないようにと言われてきました。産後は、ホルモンの変化や育児による睡眠不足などから、自律神経が乱れ、血行不良による目の不調(疲れ、痛み、ドライアイなど)が起こりやすくなっています。悪化すれば頭痛や肩こりなどの症状もみられるようになりますので注が必要です。最近は本や雑誌、テレビを見る人が減りましたが、一方でスマホを使用する人が増えました。スマホの長時間使用は、目を疲れさせるだけでなく、寝つきを悪くしたり、眠りが浅くなったりするなどの睡眠障害を招きます。スマホの普及で目のトラブルを抱えている人が増え、昔以上に目を休ませる必要性が高まっているかもしれません。

4.髪を洗ったり、入浴をしてはいけない

半世紀ほど前までは髪を洗うのは退院してから、入浴は1ヶ月健診を終えてからなどと言われた時代がありました。当時のママたちは、どれほど不快な思いをしたことでしょう。お風呂で気を失ったり、転んだりすると大変ですから、入浴に対しては慎重に考えていました。 当時の助産師たちは、ママの清潔のニーズに応えるために、退院前のシャワー浴から始め、トラブルが起きないことを確認しながら産後3日目、1日目と早めていきました。問題が起こるどころか、ママたちは髪を洗うことを禁じられていのに髪まで洗う人が大部分でした。シャワーの気持ちよさに、髪が濡れたからと自然な流れで洗ったようです。 また、会陰への傷や子宮への感染を防ぐため、お風呂に入ることが禁止されている時代でもありました。湯船につかってもお湯は膣の入り口までしか入らないという実験結果から、清潔なお湯であれば入浴しても構わないということが証明されたにも関わらず、産後早期の入浴はなかなか広がりませんでした。今でも入浴は産後1ヶ月健診後と指導されるところはありますし、ネット上でもそのような意見がよく見られます。しかし寒い時期は、シャワーばかりでは寒くて風邪を引いてしまう人が多く、疲れもとれません。冬に出産された経産婦さんに聞くと、シャワーではなく、お風呂に入っていたという人が少なくありません。ママたちのなかには必要に応じてタブーを破る人もいたのです。 現代の看護学のテキストには、産後2週間を過ぎれば、「清潔なお湯に浸かって入浴してもよい」と書かれています。清潔は基本的なニーズの一つで、入浴は身体をきれいにするだけでなく、リラックスや身体の回復を促す効果もあり、心理的にも社会的にも良い影響を与えます。健康上の理由からお湯に浸かれない場合には、足湯を行うのも良いでしょう。

5.冷たい水に触れてはいけない

産後1ヶ月頃までの水仕事は禁じられていました。冷えは産後の回復を妨げると考えられていたからです。今は、冷たい水で炊事や洗濯をすることはありません。温水器が普及したおかげで、冷たい水に触れることがほとんどなくなりました。ここから教訓を得るとしたら、「産後の冷えに注意する」ということでしょうか。産後は睡眠不足、自律神経の乱れ、運動不足、同じ姿勢の持続などから血流が滞りやすく、冷え性になりやすくなっています。その結果、体力低下、免疫力の低下、回復の遅れ、不調などを生じやすくなるので、水仕事の有無に関わらず、冷え対策は必要です。日本人女性の7割近くが冷え性で悩んでいると言われています。この機会に冷えない体つくりをしましょう。

6.甘いものや揚げ物は食べてはいけない

赤ちゃんに母乳を飲ませている間は、甘いものや脂っぽいものを食べると乳腺が詰まり、乳腺炎になると言われてきました。そのため多くのママたちが、好きなものを我慢し、食事制限を続けていました。しかし国内外での研究が進み、今では特定の食物が乳腺炎のリスクになるという根拠はないことが明らかになっています。 産後だから、授乳中だからと言って、甘いものや揚げ物を制限する必要はありません。しかし過剰摂取は健康を害します。産後の回復を促し、赤ちゃんの食べ物となる母乳をつくるためには、バランスの良い食事が必要です。産後は育児忙しく、妊娠中に身に着けた良い生活習慣を崩さないようにしましょう。将来の生活習慣病対策になります。

7.性行為をしてはいけない

昔の男性の間では、産後とかけて「3×5=15日」。つまり産後15日過ぎれば性向を再開しても良いという根拠のない俗説が広がっていました。大変な出産を経て、まだ子宮や腟などの傷が回復していない時期に性向の再開とは、とんでもないことです。 一般的には、産後1ヶ月健診で医師から異常を指摘されなければ、性行為を再開しても良いとされています。しかし実際には会陰の傷の痛み、授乳や育児のこともあり、1ヶ月半から2ヶ月頃に再開する人が多いようです。また性交の再開の時期は、個人差が大きく、産後1年経ってからという夫婦もあります。性行為をいつ再開においては、夫婦の関係性が大事です。

8.嗜好品について

赤ちゃんへの影響を考えて、大部分の人は妊娠期から禁煙を続けています。しかし家族による受動喫煙や三次喫煙(残留受動喫煙)対策は十分ではないように思います。赤ちゃんは気管支が弱く、壁やカーテン、衣類などに付着したまま残る有害物質を吸入してしまいますし、マットやテーブル、家具についた有害物質を口にする危険もあります。紙巻タバコよりリスクが少ないとは言え、加熱式タバコ、電子式タバコでも健康への影響があります。そして、乳幼児の誤飲の危険性もあります。新しい家族を迎えたことをきっかけに、家族で禁煙について考える良い機会にしてください。

まとめ

産後のタブーが生まれたのは、産後の回復や赤ちゃんへの影響を考えてのことでした。しかしなかには根拠がないもの、今の時代では必要ないことも含まれているかもしれません。この機会に、家族で産後のタブーについて話し合い、快適な産後の生活を送っていただけることを願っています。
更新日:10/10(10/03〜10/09集計)