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【服の裏バナシ】引き算の美学。第二次世界大戦が生んだ、幻のデニムジャケットとは?

公開日:2026/02/21 更新日:2026/02/23

1.いろいろあります。デニムジャケット。

デニムジャケットの元祖と言えば、もはや誰しも一度は耳にしたことがあるであろう、Levi’s。世に生まれた当時は「デニムブラウス」とか呼ばれていたそうです。 元々おしゃれ用ではなく、あくまでも用途は労働者の作業着。上着というよりは、頑丈なシャツ…くらいのノリだったんでしょうね。 さてさてそんな全ての起源となったリーバイスのデニムジャケットですが、大きく分けると3種類。販売されていた年代で区別され、それぞれ1st、2nd、3rdなんて呼ばれたりします。 ご存知の方も多いかもしれませんが、改めてざっくりと整理してみますね。

これぞ原点、始まりの一着。「1st」

1905年頃から約50年ほど生産されていたモデル、通称「1st(ファースト)」。 見分け方はとっても簡単。左胸にポケットが1つ付いているのが1stです。「ポケット1つ、1st」で覚えてください。 今回のメインテーマでもあり、オシャレさん達がこぞって探し求めている「大戦モデル」が存在するのもこの1stです。ここは後ほどもう少し詳しくお話させていただきますね。 ポケット以外の特徴としては、前身頃のプリーツや後ろ身頃のシンチバックも見分けるポイントです。
余談ですが、この頃のシンチバックは尖った針状のパーツをベルトに突き刺して固定する設計。これが結構鋭くてですね、気付かぬうちに椅子や車のシートに刺さって穴が開いたり…なんてこともあったそうです。 現代のJIS規格が裸足で逃げ出すレベルの、ある意味凶悪なディティールですが…。 良くも悪くも大らかな時代だったんだなぁとロマンを感じることが出来たら、あなたも立派なデニムマニアです。ようこそ。待ってたよ。

機能と日常着の二重奏。「2nd」

1953年頃から8年ほど販売されていたモデル、通称「2nd(セカンド)」。先代の1stの歴史が50年ほど続いていたのに対して、こちらは驚くほど短命です。 生産期間の短さ故に希少価値が高く、現代でも語り継がれる2ndは、まるで彗星のごとく強い光を放った中継ぎのエースのよう。 音楽業界で言うところの尾崎豊や小室哲哉、スポーツ界で言うところのハンカチ王子や本田圭佑でしょうか。 北斗の拳で言うと、存在感的にはラオウあたりですかね。あ、もういいですかこの話? こちらの見分け方もとっても簡単。両胸にポケット、合わせて2つ付いているのが2ndです。「ポケット2つ、2nd」で覚えてください。
  • 時代的にも「本気の作業着」から「おしゃれ着」にシフトしつつある、そんな過渡期の時代。ポケット以外の特徴としては、背面のシンチバックが廃止されて両脇のアジャストボタンに進化していたりします。安全。 そんな2ndをスクリーンを通して印象づけた存在の一人が、エルヴィス・プレスリー。 当時は不良の恰好という烙印を押されていたデニムジャケットを、ロックの帝王が銀幕で華々しく着こなす。その姿は若者たちにとって、まさに自由の象徴。 空前の経済成長真っ只中のアメリカにおいて、それはそれは凄まじい衝撃だったんだろうなぁ…とロマンを感じることが出来たら、あなたも立派なデニムマニアで(以下省略

    三位一体の完成形。「3rd」

    1962年頃から現在に至るまで、半世紀以上愛され続けている通称「3rd(サード)」。デニムジャケットと言えばこの形!という方も多いのではないでしょうか? こちらの特徴は何と言ってもフロントのV字状の切り替えと先の尖ったフラップポケット。「Vの字ステッチ、3rd」くらいのノリで覚えてください。 シルエットも1stや2ndに比べると幾分かシュッとしています※。 (※シュッとしている=関西弁でスマート、すっきり…など幅広い意味を持つ便利ワード) ここまでくるともはや時代はファッションに全振り。 立体的な裁断による着心地の向上やどんなファッションにでも合う汎用性、そして何より頑丈。 3代目ともなればこの時点で高い完成度を誇っていました。 ゆとりを生み出すためのパーツであるフロントプリーツも、潔く省略。 現在のデニムジャケットの大半は、このリーバイスの3rdのデザインをベースにしていると言っても過言ではないかもしれません。 誕生してから既に60年以上経ってもなお色褪せないその姿。もはや流行を通り越して、「究極のスタンダード」となったのだなぁ…とロマンを感じることが出来(以下省略

    2.時代が生んだ引き算、「大戦モデル」。

    さて本日はここからが本題。ここ数年のデニムジャケット界隈を賑わせている「大戦モデル」というキーワード。これはつまり「ごく一時期にのみ生産された特別仕様の1st」のことを指します。 一般的に特別仕様というと、豪華であったり凝ったディティールが追加されているイメージがあるかもしれませんが…。 デニムジャケットの大戦モデルに限ってはその逆。色んなところが削られ省かれ、簡素化されているのです。 特徴的な違いの一つが、「ポケットのフラップ」。通常モデルにはフラップが付きますが、大戦モデルはそれがありません。 もう一つ見分けやすいのは、「フロントボタンの数」。通常モデルが5つなのに対し、4つしか付いていません。 さらに細かいところで言うと、「月桂樹のドーナツボタン(=軍用の量産品)が使われている」とか。 その他には「デニムの生地が粗雑で厚い」「縫製が簡素化されている」などが挙げられます。縫製の簡素化に至っては場所によって糸の色が違っていたり、誰が見ても分かるレベルで歪んでいたり。 ぱっと見は同じですが、よーく見比べると結構違いがあります。

    Q.なんでこんなことになってるの?

    あれこれ簡素化されてしまった大戦モデル。一歩間違えれば廉価版とも思われかねないアイテムですが、何故こんなことになっているかというと…。 結論から申します。この大戦モデルとは、「第二次世界大戦中に生産されていた1st」を指します。 大戦モデルが生産されていたのは一般的に1942年から1946年頃。察しの良い方はもうお気付きでしょう。 世界一の圧倒的な国力・経済力を誇ったアメリカですが、そんなアメリカですら戦時中は物資統制が敷かれました。 要するに、 「物資が足りねぇ!国を挙げて節約しようぜ!」 というお題目です。 服飾産業も例外ではなく、ありとあらゆるものが節約された結果生まれたのが、「大戦モデル」なのです。 1945年に第二次世界大戦は終結するわけですが、戦争が終わったからといってすぐに国は元通りにはなりません。 実際に1946年頃まで大戦モデルは生産されていました。 個体によっては「ボタンはロゴ入りに戻ったけどフラップはまだ付いていない」といったちぐはぐなモデル、通称「大戦直後モデル」なんてレア物も存在するそうです。 歴史のうねりの中で、たった4年しか生産されなかった幻の一着、それが「大戦モデル」。 華美な装飾は無い、簡素なアイテム。しかしその簡素さこそ、戦時中の空気を感じさせる力強さのようなものを持っています。 ここにロマンを感じることが出来たら、あなたも立派なデニムマニアです。

    3.幻を現代に蘇らせる職人魂。

    戦時中のたった4年しか生産されておらず、しかもそれが80年も前の話となると、なかなか実物が存在していません。 そこで活躍するのが、日本が世界に誇る名ブランド達。 その歴史に裏打ちされた確かな技術と圧倒的な分析力、情報力で大戦モデルを見事に現代に復刻させています。 デニムは好きだけど、どれを選べばいいか迷う…というあなたに。 当店にて取り扱い中の大戦モデルをご紹介します。

    4.歴史とロマンを纏う、大戦モデル。

    というわけで、ざっくりとした大戦モデルのご紹介でした。 不自由な時代が生んだ、あまりにも自由な一着。 効率や安全が優先される現代において、あえて不便で武骨な『大戦モデル』を選ぶ。 それは、現代のサステナブルやミニマル志向に通ずるものがあるかもしれません。 単に服を着るという行為を超えて、歴史とロマンを纏う…というと、大袈裟過ぎるでしょうか。 今回ご紹介したモデルたちは、単なるコピーではありません。 過去への敬意と、現代のファッションとしての解釈が混ざり合った、今しか作れない傑作です。 袖を通した瞬間に感じる、ズシリとした歴史の重み。 それを軽やかに自分らしく着こなす面白さ。 今年の春はそんなロマンに思いを馳せながら、デニムジャケットを楽しむのも一興ではないでしょうか。