「同じサイズなのに、なぜこんなに値段が違うの?」
スリングベルトを探していると、誰もが一度は感じる疑問ではないでしょうか。
50mm幅・3mのスリングベルトでも、700円台のものから2,000円を超えるものまで。この価格差を見ると、「安いものは品質が悪いのでは」と不安になるのは当然のことです。
しかし、実際に業界で働いてみて分かったことがあります。
価格差のほとんどは、製品の「品質」ではなく、別の要因で決まっているということです。
この記事では、スリングベルトの価格差が生まれる本当の理由と、失敗しない選び方のポイントをお伝えします。
価格差を生む2つの要因
スリングベルトの価格を左右する要因は、大きく分けて2つあります。
要因①:準拠している「規格」の違い
スリングベルトには、製造国や販売地域によって異なる安全規格があります。
【CE基準(欧州規格)】
世界中のスリングベルトメーカーは、基本的に欧州のCE基準をベースに製品を製造しています。理由はシンプルで、欧州市場が大きいからです。CE基準をクリアしておけばEU圏全域で販売できるため、グローバル展開するメーカーはまずこの基準を取得します。
【JIS基準(日本規格)】
一方、日本にはJIS基準という独自の規格があります。問題は、CE基準とJIS基準では試験方法や安全率の考え方がかなり異なること。CE基準をクリアした製品をそのまま持ってきても、JIS基準には適合しません。
JIS基準に合わせるには、設計の見直しや追加試験が必要になり、当然コストがかかります。欧州より市場規模の小さい日本のために、わざわざそこまで対応する海外メーカーは、正直なところほとんどありません。
結果として、JIS規格品はCE基準品と比較して3倍以上の価格になることも珍しくないのです。
【アメリカ】
ちなみに・・・少し脱線しますが、アメリカの規格事情についても触れておきます。
アメリカには、CE基準やJIS基準のような「販売前に認可を取る」という概念が基本的にありません。事前許可なく、自由に製品を市場に出せます。
ただし、事故が起きた瞬間に訴訟になります。
製造物責任(PL法)が厳格に運用されているため、問題のある製品を販売したメーカーは巨額の賠償を負うリスクがある。だからこそ、認可制度がなくてもメーカーは自主的に品質を担保せざるを得ない仕組みになっています。
日本や欧州の「事前認可型」とアメリカの「事後責任型」、どちらが良いかは一概に言えませんが、国によって安全への考え方がまったく違うことは知っておいて損はありません。
要因②:流通経路の違い
もう一つの大きな要因が、流通コストです。
メーカー → 商社 → 問屋 → 販売店 → お客様
この流れを経るたびに、中間マージンが上乗せされていきます。同じ工場で作られた同じ製品でも、どこから購入するかで価格が大きく変わるのです。
つまり、高価格の製品が必ずしも高品質とは限らない。単に流通コストが乗っているだけというケースも少なくありません
「高ければ安心」は本当か?
ここで率直にお伝えしたいことがあります。
玉掛け作業中の事故は、厚生労働省の労働災害統計でも毎年報告されています。スリングベルトの選定が安全に関わることは間違いありません。だから「多少高くても安心を買いたい」という判断は、決して間違っていないと思います。
ただし、問題は「高い=安心」が必ずしも成り立たないことです。
先ほどお伝えしたように、価格差の多くは規格の違いと流通コストで決まっています。製品そのものの品質差ではないケースが多いのです。
では、価格以外に何を見ればいいのでしょうか。
品質を見極める2つのチェックポイント
スリングベルトの品質を判断する際は、以下の2点を確認することをおすすめします。
チェック①:製造工場の認証(ISO9001)
ISO9001は、製品そのものではなく「工場の品質管理体制」を証明する国際規格です。
この認証を取得している工場は、製造工程において一定の品質管理が義務付けられています。原材料の管理から製造プロセス、出荷前検査まで、体系的な品質管理が行われている証拠です。
チェック②:製品の認証(CEマーク)
CEマークは、EU圏で販売するために必要な安全基準です。製品が欧州の安全・健康・環境保護に関する要求事項を満たしていることを示します。
グローバルに展開するメーカーの製品であれば、ほぼ確実に取得しています。
「JIS規格品じゃないと不安」という方もいらっしゃいますが、CE基準も安全性に関しては厳格な基準を設けています。どちらの規格を重視するかは、取引先の要件や用途に応じて判断すれば問題ありません。
JIS規格品が必要なケースとは
ただし、JIS規格品でなければならないケースも存在します。
大手製造業や建設会社の中には、「JIS基準に適合したスリングベルトでないと取引しない」というルールを設けているところがあります。
安全管理の観点から、調達基準を厳格化しているわけです。
このような取引先を持つ場合は、JIS規格品を選ぶ必要があります。価格は高くなりますが、それは取引要件として必要なコストと考えてください。
逆に言えば、そのような制約がなければ、CE基準準拠品で十分ということです。
賢い選び方:3つのステップ
ここまでの内容を踏まえて、スリングベルトの賢い選び方を3つのステップでまとめます。
【ステップ1】取引先の要件を確認する
まず、納品先や現場で「JIS規格品」が必須かどうかを確認してください。必須であればJIS規格品を選ぶしかありません。特に指定がなければ、CE基準準拠品も選択肢に入ります。
【ステップ2】認証を確認する
製造工場がISO9001を取得しているか、製品がCEマークを取得しているかを確認します。この2つが揃っていれば、品質管理と安全基準の両面で一定の水準が担保されています。
【ステップ3】まずは少量で試す
初めて購入する場合は、いきなり大量発注せず、まず1〜2本で試すことをおすすめします。届いた製品を実際に手に取って、縫製の状態、ベルトの厚み、アイ部分の強度を確認してみてください。
普段使っている他のスリングベルトと比べてみれば、品質は一目瞭然です。納得いただけたら、次回からまとめて注文すればコストメリットも得られます。
まとめ:価格だけで判断しない選び方を
スリングベルトの価格差は、「品質の差」というより、「どの規格に準拠しているか」と「流通コスト」の差で決まることがほとんどです。
品質を判断する際は、以下の2点を確認してください。
・製造工場がISO9001認証を取得しているか
・製品がCEマークを取得しているか
取引先から「JIS規格品でなければならない」という条件がある場合は、JIS規格品を選ぶ必要があります。その場合は価格が高くなることを織り込んでおいてください。
そうでなければ、CE基準準拠品で認証がしっかりした製品を選ぶのが、コストと安全のバランスが取れた選択です。
最終的に判断するのは、現場で実際に使う皆様です。カタログや説明だけで決めるのではなく、まずは実物を見て、触って、ご自身の目で確かめていただければと思います。
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